ナイルテラピア

古代エジプトの壁画にも描かれアフリカを起源とする世界で最も重要な養殖魚の一つであるナイルテラピア。日本ではイズミダイ(泉鯛)やチカダイ(地下鯛)という名で回転寿司のネタやスーパーの刺身として流通しておりマダイの代用魚として私たちの食生活に深く入り込んでいます。一方でその極めて高い環境適応能力と繁殖力から日本の生態系を脅かす外来種としての側面も持ち合わせています。温泉街の排水路で群れを成して泳ぐ姿が目撃されることもあるこの逞しき魚の正体と食材としての実力について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | スズキ目カワスズメ科(シクリッド科)オレオクロミス属 |
| 標準和名 | ナイルテラピア |
| 漢字 | 尼羅テラピア |
| 別名 | イズミダイ、チカダイ、テレピア |
| 学名 | Oreochromis niloticus |
| 英名 | Nile tilapia |
| 季節 | 通年 |
| 生息域 | アフリカ原産、日本各地の温排水域(沖縄など) |
ナイルテラピアとは
ナイルテラピアはアフリカ大陸東部のナイル川流域などを原産とするシクリッド科の淡水魚です。
戦後の食糧難の時代に重要なタンパク源として海外から持ち込まれました。当初はティラピアと呼ばれ養殖が盛んに行われましたがその後の飽食の時代とともに一旦は廃れかけました。しかしそのクセのない白身がマダイによく似ていたことからイズミダイという商品名が付けられ安価で美味しいマダイの代用品として再び脚光を浴びることになりました。
現在では沖縄県や温泉地などの水温が高い地域で野生化しており特定外来生物には指定されていませんが重点対策外来種として生態系への影響が懸念されています。
ナイルテラピアの特徴
体長は30センチメートルから50センチメートルほどになり最大で60センチメートルを超えることもあります。
体型はマダイやクロダイに似て側扁し体高があります。背ビレには鋭い棘が並んでおり不用意に掴むと怪我をします。
体色は灰褐色や緑褐色で興奮すると黒っぽい横縞模様が現れることがあります。
近縁種であるモザンビークテラピアとの見分け方は尾ビレの模様です。ナイルテラピアの尾ビレには明確な垂直の縞模様がありますがモザンビークテラピアにはありません。
ナイルテラピアの生態とライフサイクル
食性は雑食性です。藻類や水草プランクトンから昆虫小魚まで口に入るものは何でも貪欲に食べます。
特筆すべきはマウスブルーディング(口内保育)という独自の子育て方法です。メスは産卵した後すぐに卵を口の中に入れ孵化して稚魚がある程度大きくなるまで口の中で守り育てます。これにより外敵からの捕食を防ぎ高い生存率を維持しています。
水質汚染や低酸素状態にも非常に強く汚れたドブ川のような場所でも生き延びることができます。また淡水魚ですが塩分への耐性も強く汽水域でも生息可能です。ただし寒さには弱く水温が10度を下回ると死滅してしまいます。
ナイルテラピアの分布と生息環境
本来は熱帯魚であるため日本の冬の寒さには耐えられませんが沖縄県では河川や池に定着しほぼ全域で繁殖しています。
本州以北では冬でも水温が保たれる特殊な環境にのみ生息しています。具体的には工場の温排水が流れ込む場所や温泉街の排水路などです。これらの場所では冬でも活発に活動し密集して泳ぐ姿が見られます。
ナイルテラピアの釣り方
管理釣り場や温排水域での対象魚として人気があります。引きが強くゲーム性が高い魚です。
餌釣り
パンや練り餌ミミズなど何でも食べます。
ウキ釣りやミャク釣りで底付近を狙います。アタリは明確ですが口が硬いためしっかりと合わせる必要があります。群れていることが多く一匹釣れると連続して釣れることも珍しくありません。
ルアーフィッシング
雑食性で攻撃性も強いためルアーにも果敢に反応します。
スプーンや小型のクランクベイトスピナーなどを使用します。特に繁殖期のオスは縄張り意識が強く目の前を通るルアーに激しくアタックしてきます。ブラックバスやブルーギル釣りの外道として釣れることも多いですがそのファイトは本命に引けを取りません。
ナイルテラピアの料理
見た目や生息環境から敬遠されることもありますが適切に処理された身は非常に美味です。世界中で食用魚として愛されている理由が分かります。
刺身(イズミダイ)
綺麗な水で養殖されたものはイズミダイとして刺身で流通しています。
血合いが美しく透明感のある白身は見た目も味もマダイそっくりです。コリコリとした食感と脂の甘みがあり臭みは全くありません。野生の個体を刺身で食べる場合は寄生虫のリスクや水質の問題があるためおすすめできません。
ムニエル・フライ
白身魚の定番料理です。
皮を引いてフィレにしバターで焼くムニエルやフライにするとフワフワの食感になります。泥抜きをしていない野生個体でも皮を引いて濃いめの味付けにすれば美味しく食べられます。
塩焼き
臭みのない綺麗な個体であれば塩焼きも絶品です。
皮は厚く焼くとパリッとして香ばしく中の身はジューシーです。鯛の塩焼きと言われて出されても気づかない人が多いほどのクオリティを持っています。
まとめ
ナイルテラピアはイズミダイとして私たちの食卓を支える優秀な食材である一方日本の水辺に侵入した逞しき侵略者でもあります。その生命力と繁殖力は驚異的であり一度定着すると駆除は困難です。釣り人にとっては手軽で力強いファイターですが釣った魚を別の場所に放流することは生態系を破壊する行為になるため絶対にやめましょう。
ナイルテラピアに関するよくある質問
臭くないのですか
綺麗な水で養殖されたものは全く臭みがありません。しかし野生化して汚れた川や排水路に住んでいる個体は皮や内臓に泥臭さが染み付いていることがあります。野生のものを食べる場合は綺麗な水で数日間泥抜きをするか皮を完全に引いて調理することをおすすめします。
特定外来生物ですか
2024年現在ナイルテラピアは特定外来生物には指定されていませんが重点対策外来種に指定されています。これは甚大な被害が予想されるため対策が必要な種という位置づけです。法的な飼育禁止などはありませんが生きたままの運搬や放流は慎むべきです。
鯛の代わりになるというのは本当ですか
本当です。味や食感見た目の美しさがマダイに極めて近く専門家でも切り身の状態では見分けるのが難しいと言われています。回転寿司の鯛やスーパーの鯛の刺身盛り合わせなど表記をよく見ると原材料名にティラピアやイズミダイと書かれていることがあります。































