アオイガイ

優雅な白い貝殻を持ち海面を漂う姿からペーパーノーチラスとも呼ばれるアオイガイ。その名前には貝と付いていますが二枚貝や巻き貝の仲間ではなくタコやイカと同じ頭足類に属しています。美しい曲線を描く薄い殻はビーチコーミング(漂着物探し)の憧れの的であり海岸で完全な形のものを拾うことができたらそれは大変な幸運です。普段は暖かい外洋を旅していますが冬になると寒さに弱って日本海側の海岸に大量に漂着することがあります。貝殻の美しさばかりが注目されがちですが中身のタコも非常に美味であるこの生き物の正体やオスとメスの切ない関係そして拾った際の食べ方について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 八腕形目アオイガイ科アオイガイ属 |
| 標準和名 | アオイガイ |
| 漢字 | 葵貝 |
| 別名 | カイダコ、フネダコ |
| 学名 | Argonauta argo |
| 英名 | Greater argonaut / Paper nautilus |
| 季節 | 冬 |
| 生息域 | 全世界の熱帯・亜熱帯の表層 |
アオイガイとは
アオイガイは世界中の暖かい海の表層を浮遊して生活しているタコの一種です。
二枚の葵(アオイ)の葉を合わせたような形をしていることから葵貝と名付けられました。
またその生態からカイダコ(貝蛸)と呼ばれることもあります。
通常は沖合に生息しているため生きた姿を目にすることは稀ですが冬場に北風が吹くと対馬暖流に乗って日本海側の沿岸に流されてくることがあります。
水温が下がると動けなくなりそのまま波に打ち上げられるため福井県や石川県新潟県などの海岸では冬の風物詩となっています。
中身が入った状態で打ち上げられることもあれば空っぽの殻だけが漂着することもあります。
アオイガイの特徴
最大の特徴は何と言ってもその白くて薄い貝殻です。
しかしこの殻は自分の体の一部として生まれた時から持っているわけではありません。
メスのタコが成長する過程で第一腕(一番上の腕)から石灰質の物質を分泌し自分で作り上げたものです。
この殻は自分の身を守る家であると同時に大切な卵を守るための揺り籠でもあります。
殻の中にはタコが入っていますが殻と体は筋肉で繋がっているわけではないため自分の意志で殻から抜け出すことも可能ですし驚いた拍子に殻を捨ててしまうこともあります。
生体は殻の表面に銀色の膜を張っており青白く輝く非常に美しい姿をしています。
貝殻を持たないオス
立派な殻を持つのはメスだけです。
アオイガイのオスは殻を持たず体長もわずか数センチメートルしかありません。
メスが殻を含めて30センチメートル近くに成長するのに対しオスは豆粒のような大きさであり同じ種類とは思えないほどの体格差があります。
オスは交接(交尾)のためにメスに出会うと交接腕と呼ばれる精子の入った腕を切り離してメスの体内に残します。
役目を終えたオスはそのまま短い一生を終えると考えられています。
私たちがアオイガイとして認識している姿は全てお母さんタコなのです。
アオイガイの料理
海岸に打ち上げられたばかりの新鮮な個体であれば持ち帰って食べることができます。味は一般的なマダコやミズダコに似ていますがより水分が多く柔らかい食感が特徴です。
茹でダコ
最もポピュラーな食べ方です。
殻から身を取り出し内臓を除去して塩揉みしてから茹でます。
茹でると鮮やかな赤色になり見た目は普通のタコと変わりません。
身は非常に柔らかく甘みがあり噛む力が弱くても簡単に噛み切れます。
酢醤油や生姜醤油で食べると美味です。
刺身
生きたまま漂着した新鮮なものであれば刺身でも食べられます。
皮を剥いで薄切りにすると甘みが強くねっとりとした食感を楽しめます。
ただし野生生物であるため寄生虫のリスクを考慮して一度冷凍するか十分に目利きをする必要があります。
炒め物
柔らかい身は炒め物にしても硬くなりません。
ニンニクとオリーブオイルで炒めたり野菜と一緒に塩炒めにしたりするとご飯のおかずになります。
まとめ
アオイガイは母性本能が生み出した美しい芸術作品です。自らの腕で殻を編みその中で卵を慈しむ姿は海の神秘そのものです。もし冬の海岸で白い貝殻を見つけたらその薄さと軽さに驚くことでしょう。そしてもし中身が入っていたら海からの美味しい贈り物として感謝して味わってみてください。それは遠い海を旅してきた母なるタコの味です。
アオイガイに関するよくある質問
貝殻はどうやって保存すればいいですか
中身が入っていた場合は綺麗に取り出し真水でよく洗って塩分を抜きます。
薄くて割れやすいためブラシなどで強くこするのは厳禁です。
汚れが気になる場合は薄めた漂白剤に短時間浸けると白さが際立ちます。
直射日光に当てると劣化する恐れがあるため風通しの良い日陰でしっかりと乾燥させてください。
売っていますか
鮮魚店やスーパーに並ぶことはまずありません。
稀に地元の漁港近くの直売所などで雑魚として扱われていることがありますが基本的には拾うしかありません。
一方で綺麗な状態の貝殻は標本やコレクションとして人気がありネットオークションや貝殻専門店で高値で取引されることがあります。
毒はありますか
アオイガイ自体に毒はありません。
またヒョウモンダコのような唾液腺の毒も報告されていません。
しかしタコの仲間は顎(カラス)が鋭いため生きた個体を触る際は噛まれないように注意してください。
































