ダルマザメ

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自分よりも遥かに巨大なクジラやマグロ、時には潜水艦にまで襲いかかる恐れ知らずの小さなサメをご存知でしょうか。その名はダルマザメ。体長はわずか50センチメートルほどしかありませんが、特殊な口と鋭い歯を使って獲物の皮膚を円形にくり抜いて食べるという衝撃的な捕食行動をとります。英語では「クッキーカッターシャーク(クッキーの型抜きザメ)」と呼ばれ、その噛み跡はまるで人工的な刻印のようです。深海に潜み、腹部にある発光器を使って獲物を誘き寄せるこの奇妙なサメの生態や、人間社会に与えた意外な被害について解説します。

項目内容
分類ツノザメ目ヨロイザメ科ダルマザメ属
標準和名ダルマザメ
漢字達磨鮫
学名Isistius brasiliensis
英名Cookiecutter shark
生息域世界中の熱帯・亜熱帯の深海
特徴円形の口、発光器、大型生物への外部寄生的な捕食
目次

ダルマザメとは

ダルマザメは、世界中の暖かい海の深海に生息するヨロイザメ科の小型のサメです。

名前の由来は、その丸っこい頭部と顔つきが「ダルマ(達磨)」に似ていることに由来すると言われていますが、英名の「クッキーカッターシャーク」の方がその生態を的確に表しています。

昼間は水深1000メートル以深の暗闇に潜んでいますが、夜になると獲物を求めて浅場まで浮上する日周鉛直移動を行います。

食用として流通することはなく、深海延縄漁などで誤って混獲される程度ですが、その特異な生態から海洋生物学の世界では非常に有名な存在です。

マグロやカジキなどの大型魚の体表に、治りかけの丸い傷跡がついていることがよくありますが、その犯人の多くはこのダルマザメです。

恐怖の捕食スタイル「食い千切り」

ダルマザメの最大の特徴は、他に類を見ない捕食方法にあります。

彼らの口は吸盤のような唇をしており、獲物の体に吸い付くことができます。

一度吸着すると、下顎にあるノコギリのような鋭い歯を食い込ませ、体を回転させることで、肉を円形(円筒形)にくり抜いて奪い取ります。

この傷跡は直径5センチメートル、深さ数センチメートルにもなり、まるでアイスクリームディッシャーで掬い取ったかのような跡が残ります。

獲物を殺して食べるのではなく、体の一部だけを奪って逃げるため「外部寄生的な捕食」とも呼ばれます。

発光器による巧みな罠

ダルマザメの腹側には無数の発光器があり、青白く光ります。

これは「カウンターイルミネーション」と呼ばれ、海面からの光に自分の影を溶け込ませて、下から見上げた捕食者(敵)から姿を隠す役割があります。

しかし、ダルマザメには首のあたりに黒い帯状の模様があり、この部分だけは光りません。

これにより、下から見ると「小さな魚の影」のように見え、これを餌だと思って近づいてきた大型の捕食者に対して、逆にカウンター攻撃を仕掛けて肉を食い千切ると考えられています。

つまり、自分を餌に見せかけて敵を誘き寄せるルアーのような役割を果たしているのです。

潜水艦をも襲う被害

ダルマザメの被害者は海洋生物だけではありません。

過去には、アメリカ海軍の原子力潜水艦のソナードーム(音波探知機のカバー)にあるゴム製の部品がダルマザメに食い千切られ、油漏れや故障の原因になったという事例が報告されています。

また、海底ケーブルの被覆が齧られる被害も発生しています。

人工物のゴムやプラスチックまで生物の肉と勘違いして齧り付いてしまうほど、彼らの食欲と顎の力は強力なのです。

現在は対策として、潜水艦やケーブルの素材にはダルマザメの歯が立たないような硬質のものが使われるようになっています。

人間への危険性と食用について

通常、深海に生息しているため人間と遭遇することは稀ですが、夜間に遠泳やダイビングをしている人がダルマザメに襲われ、足の肉をくり抜かれるという事故が数件報告されています。

小型とはいえ、鋭利な刃物のような歯を持っているため、人間にとっても危険生物となり得ます。

食用に関しては、体が小さく肉も少ないため、商業的な価値はありません。

一部の地域や深海魚好きの間で試食されることはありますが、筋肉にワックスエステル(深海魚特有の脂)を多く含んでいる可能性があり、多量に食べると下痢を起こすリスクも考えられます。

まとめ

ダルマザメは、小さく可愛らしい名前とは裏腹に、深海の暗闇で高度な戦略を駆使して生きるハンターです。自分より何十倍も大きなクジラや最強の捕食者であるホオジロザメ、果ては最新鋭の潜水艦にまで噛み付くその度胸は、ある意味で海で最も恐れられている生物と言えるかもしれません。もし市場でマグロの体に丸い傷跡を見つけたら、それはこの小さな「クッキーカッター」が残した生きている証です。

ダルマザメに関するよくある質問

どんな味がしますか

市場に出回らないため一般的な食味の評価はありませんが、試食した人の報告によると、白身で脂が多く、非常に水っぽいとされます。

ヨロイザメ科のサメは肝油を採るために利用されることが多く、肉自体はあまり美味しくないとされることが多いです。

日本近海にもいますか

はい、生息しています。

本州中部以南の太平洋側や沖縄周辺の深海に分布しています。

駿河湾や相模湾などの深海生物の調査でも捕獲されることがあります。

また、水揚げされたカジキやマグロの体にダルマザメの噛み跡が見られることは日本でも日常茶飯事です。

なぜ自分より大きな獲物を襲うのですか

深海という餌の少ない環境で効率よく栄養を得るための適応だと考えられています。

獲物を殺すほどの戦いを挑むと自分も怪我をするリスクがありますが、一口だけ齧り取って逃げるヒットアンドアウェイ戦法なら、巨大な相手からも安全にエネルギーを摂取し続けることができます。

彼らにとって大型のクジラや魚は、泳ぐ巨大な食料庫のようなものなのかもしれません。

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この記事を書いた人

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