トコブシ

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アワビを小さくしたような見た目を持ち磯の岩場にぴったりと張り付いているトコブシ。市場ではその姿からアワビの子供と間違われることもありますが生物学的にはれっきとした別種であり大人の手のひらに収まるサイズで成長が止まる小型の巻貝です。別名ナガレコとも呼ばれアワビよりも動きが早く岩の上を滑るように移動することからその名がつきました。加熱するとアワビよりも柔らかく独特の食感と旨味を楽しめるため煮付けやバター焼きとして珍重される美味しい貝の生態とアワビとの見分け方について解説します。

項目内容
分類ミミガイ科アワビ属
標準和名トコブシ
漢字床臥、常節
別名ナガレコ、アナゴ(伊豆地方など)
学名Haliotis diversicolor
英名Variously colored abalone / Small abalone
季節春から夏(産卵期は秋)
生息域本州中部以南の岩礁帯(潮間帯〜水深10m)
目次

トコブシとは

トコブシは日本各地の暖かい海の岩礁帯に生息するミミガイ科アワビ属の巻貝です。

漢字で「床臥(とこぶし)」と書くのは海底の岩(床)に臥(ふ)しているように張り付いている姿に由来すると言われています。

アワビと同じグループに属していますが最大でも殻長7センチメートルから8センチメートル程度にしかならずアワビのような大型にはなりません。

味はアワビに勝るとも劣らない旨味を持っており特に加熱した時の柔らかさはトコブシの方が上だと評価する人もいます。価格もアワビよりは手頃であることが多いですが近年は漁獲量が減少し高級食材の仲間入りをしています。

地域によってはナガレコ(流れ子)と呼ばれ親しまれています。

トコブシの特徴

殻は楕円形で平たく皿のような形をしています。殻の表面には成長脈や放射状の模様がありますが海藻や付着生物に覆われていることが多く見えにくい場合があります。

アワビとの最大の違いであり見分けるポイントは殻にある「呼水孔(こすいこう)」と呼ばれる穴の数と形状です。

穴の数:アワビ(クロアワビやメガイアワビ)は4個から5個程度ですがトコブシは6個から9個と穴の数が多いのが特徴です。

穴の形状:アワビの穴は火山の火口のように管状に突き出していますがトコブシの穴は突き出しておらずフラット(平ら)です。

身は筋肉質で足の裏を使って岩に強力に吸着しています。

トコブシの生態とライフサイクル

食性は植物食性です。岩に生えているカジメやアラメなどの海藻類を歯舌(しぜつ)というヤスリ状の器官で削り取って食べます。

夜行性であり昼間は岩の隙間や転石の下に隠れていますが夜になると活発に動き回って餌を探します。その移動速度はアワビに比べて非常に速く危険を感じると素早く逃げ出します。

産卵期は秋(9月から11月頃)です。岩礁域で放卵放精を行い孵化した幼生は海中を漂った後に着底して稚貝となります。

アワビよりも浅い場所を好み潮が引くと露出するような潮間帯から水深数メートルの浅場に多く生息しています。

トコブシの分布と生息環境

北海道南部から九州、朝鮮半島、台湾などに分布しています。

特に黒潮の影響を受ける暖かい海域の岩礁帯で多く見られます。

ゴロタ石が積み重なった場所や岩盤の亀裂などを好みます。波の荒い外洋に面した磯よりもやや波が穏やかな内湾や島の影などを好む傾向があります。

トコブシの漁法と採取

主に海女(あま)による素潜り漁や箱メガネを使って長い竿で突く見突き漁などで漁獲されます。

水深の浅い場所にいるため大潮の干潮時には磯遊びで見つけることもできますが注意が必要です。トコブシはアワビ同様に第一種共同漁業権の対象となっていることがほとんどであり漁業権の設定されている海域で一般の人が勝手に採ることは密漁となり法律で厳しく罰せられます。たとえ小さな貝一つでも犯罪となるため海に行く際は必ず現地のルールを確認してください。

トコブシの料理

アワビに比べて身が柔らかいため刺身よりも煮物や焼き物に適しています。火を通しても硬くなりにくく子供からお年寄りまで楽しめる食材です。

含め煮(甘辛煮)

トコブシ料理の定番中の定番です。

醤油、酒、みりん、砂糖で甘辛く煮付けます。殻付きのまま煮ることで殻から良い出汁が出ます。弱火でじっくりと煮含めることで味が中まで染み込みふっくらと柔らかい仕上がりになります。冷めても美味しいのでおせち料理や弁当のおかずにも最適です。

バター焼き・ソテー

アワビのステーキに負けない美味しさです。

フライパンにバターを溶かしトコブシを焼きます。仕上げに醤油を少し垂らすと香ばしい香りが食欲をそそります。身の弾力とバターのコクが絶妙にマッチしビールやワインのお供に最高です。

塩蒸し・酒蒸し

素材の味をダイレクトに楽しむなら蒸し料理です。

酒と塩少々を振って蒸し上げると磯の香りが凝縮されます。レモンやスダチを絞ってさっぱりといただくとトコブシ本来の甘みを感じることができます。

炊き込みご飯

煮汁と一緒に炊き込んだご飯はトコブシの旨味が米一粒一粒に行き渡り絶品です。贅沢に身を乗せて食べれば至福のひとときを味わえます。

まとめ

トコブシは「アワビの代用品」と呼ぶにはもったいないほど独自の魅力を持った貝です。穴の多さと平らな形状で見分けられ加熱した時の柔らかさと染み出す旨味は食通を唸らせます。磯の香りを凝縮したようなその味わいは日本の食卓に彩りを添える小さな宝石です。もし鮮魚店で見かけたらアワビとの違いを観察しつつその繊細な味を堪能してみてください。

トコブシに関するよくある質問

アワビの子供ではないのですか

はい違います。アワビの子供(稚貝)とトコブシは見た目が似ていますが別の種類の貝です。最も簡単な見分け方は殻の穴の数です。トコブシは穴が6個から9個ありますがアワビは4個から5個しかありません。またどんなに大きく成長してもトコブシは7センチメートルから8センチメートル程度で成長が止まります。

肝(内臓)は食べられますか

食べられます。新鮮なものであれば煮付けやバター焼きにする際に肝も一緒に調理して食べると濃厚なコクを楽しめます。ただし春先などの特定の時期に海藻由来の光線過敏症の原因物質(ピロフェオホルバイドa)が肝(中腸腺)に蓄積することがあるとされています(アワビ類全般)。通常流通しているものは問題ありませんが自分で採取した場合などは注意が必要とされていますが、一般的にトコブシの肝は美味として知られています。

砂出しは必要ですか

トコブシは岩に張り付いて生活しているためアサリのように砂を吸い込んでいることはほとんどありません。そのため砂出しは不要です。調理する際は殻の表面をタワシなどでこすって汚れやヌメリを落とすだけで大丈夫です。

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この記事を書いた人

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