テナガエビ

オスの体長よりも長いハサミ脚を持ち素揚げや唐揚げにするとビールの最高のお供になるテナガエビ。身近な河川の下流や湖沼に生息しており初夏になると護岸やテトラポットの隙間から長い手を伸ばして餌を探す姿が見られます。子供でも簡単に釣れる手軽さがありながら餌をハサミで掴んでから口に運ぶまでの独特の間と駆け引きが釣り人を熱中させます。泥抜きや酒締めといった一手間をかけることで高級料亭の味にも負けない香ばしさと甘みを楽しめるこのエビの生態と釣って食べるための極意について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | エビ目(十脚目)テナガエビ科テナガエビ属 |
| 標準和名 | テナガエビ |
| 漢字 | 手長海老 |
| 別名 | カワエビ、ダクダ(高知) |
| 学名 | Macrobrachium nipponense |
| 英名 | Oriental river prawn |
| 季節 | 初夏から秋(5月から9月) |
| 生息域 | 日本全国の河川下流、湖沼 |
テナガエビとは
テナガエビは日本全国の淡水域や汽水域に広く分布する大型のエビです。
名前の通り成体のオスは体長よりも長いハサミ脚(第2胸脚)を持っており一目でそれと分かります。
釣りの対象として非常に人気があり梅雨入り前後から夏にかけてがハイシーズンとなります。道具がシンプルで足場の良い場所で楽しめるためファミリーフィッシングとしても最適です。
食味は極めて良く殻が柔らかくて香ばしいため川エビの唐揚げとして居酒屋などで提供されるものの多くはこのテナガエビやスジエビです。特に釣ったばかりの新鮮なテナガエビの素揚げは絶品と称されます。
テナガエビの特徴
体長はオスが約10センチメートルメスが約6センチメートルほどですがオスのハサミを含めると20センチメートルを超える個体もいます。
体色は半透明の褐色や緑褐色をしており周囲の環境になじむ保護色となっています。
最大の特徴である長いハサミはオスのみに見られる特徴でメスのハサミはそれほど長くありません。このハサミは餌を捕まえたりメスを巡る争いや縄張り争いに使われたりします。
複眼の間にある額角(がっかく)は長く水平に伸びておりノコギリのような歯が並んでいます。
よく似ているスジエビはハサミが短く体透明で黒いスジ模様があるため区別できます。
テナガエビの生態とライフサイクル
食性は雑食性です。藻類や水草水生昆虫小魚魚の死骸など何でも食べます。
夜行性であり昼間はテトラポットの隙間や岩陰水草の中に隠れていますが夜になると活発に動き回って餌を探します。曇りの日や濁りが入っている時は昼間でも活動することがあります。
その一生は両側回遊型(りょうそくかいゆうがた)と呼ばれる生活史を送ります。夏に川や湖で産卵し孵化した幼生(ゾエア)は一度海に下ります。海でプランクトンを食べて成長した稚エビは再び川を遡上し淡水域で生活します。そのため海と繋がっていないダム湖などでは繁殖できない場合がありますが陸封型として繁殖する個体群も存在します。
寿命は1年から3年程度とされています。
テナガエビの分布と生息環境
北海道から沖縄まで日本全国に分布しています。
河川の中流から下流域湖沼などの流れが緩やかな場所を好みます。特にコンクリート護岸された場所やテトラポット帯石垣の隙間などは格好の隠れ家となるため多くのテナガエビが生息しています。
ある程度の水質汚染には耐えられますが酸欠には弱いです。都市部の河川でも水質が改善された場所では復活してきており都心の釣りスポットとして賑わっている場所もあります。
テナガエビの釣り方
テナガエビ釣りはウキ釣りやミャク釣りが一般的で独特の駆け引きが魅力です。
タックルと仕掛け
1メートルから2メートル程度の短い延べ竿を使います。市販のテナガエビ用仕掛けかタナゴ用の小さな針を使った仕掛けを使用します。
餌にはアカムシやキジ(ミミズ)魚肉ソーセージカニカマなどを使います。
釣り方のコツ(合わせのタイミング)
ここがテナガエビ釣りの最も面白いところです。
ウキがピクピクと動いたり横に移動したりしてもすぐに竿を上げてはいけません。テナガエビはまず長いハサミで餌を掴み安全な場所まで運んでから口に持っていって食べ始めます。
ウキが動いているのはハサミで餌を持っている段階や運んでいる最中です。ここで合わせてもすっぽ抜けてしまいます。ウキの動きが止まりエビが食事を始めてから(約10秒から30秒ほど待ってから)ゆっくりと竿を上げて聞き合わせをします。手元にクンクンというエビのキックバック(海老バック)を感じたら静かに抜き上げます。
テナガエビの料理
泥抜きと酒締めの下処理を行うことで臭みが消え最高の食材になります。
泥抜き
釣ってきたテナガエビは泥や未消化物を体内に持っているため真水で泥抜きをします。
エアレーションをしたバケツにエビを入れ半日から1日ほど生かしておきます。共食いを防ぐために足場となる網や隠れ家を入れておくのがコツです。水が汚れたら交換します。
酒締め(酔っ払いエビ)
調理する直前にエビをボウルに移し料理酒や日本酒を注ぎます。
エビが暴れて跳ねるためすぐに蓋をして10分ほど待ちます。これによりエビが酒を吸って体内からきれいになり臭みが消えるとともに大人しくなって調理しやすくなります。アルコールで締まった身はプリッとした食感になります。
素揚げ・唐揚げ
最もおすすめの食べ方です。
酒締めしたエビの水分をキッチンペーパーで拭き取り片栗粉を薄くまぶすかそのまま低温の油でじっくりと揚げます。最後に高温で二度揚げすると殻までパリパリになります。
長いハサミも香ばしくスナック感覚で食べられます。塩を振るだけでビールが止まらなくなる美味しさです。
艶煮(つやに)
醤油みりん酒砂糖で甘辛く煮付ける艶煮も定番です。
殻の赤色が鮮やかになり冷めても美味しいのでお弁当のおかずや常備菜として適しています。
まとめ
テナガエビは身近な水辺で手軽に狙えるターゲットでありながら釣り味も食味も一級品の実力を持っています。長いハサミを使った食事の様子を想像しながらウキの動きに集中する時間は日常を忘れさせてくれます。そして釣果を家に持ち帰り揚げたてのエビを頬張りながら飲むビールの味は釣り人だけの特権です。ぜひこれからの季節近所の川を覗いてみてください。
テナガエビに関するよくある質問
長いハサミは食べられますか
はい食べられます。素揚げや唐揚げにすればハサミの殻もパリパリになり香ばしくて美味しいです。ただし大型のオスの場合ハサミの殻が硬すぎることがあるため気になる場合は食べる前に折って取り除くかじっくりと時間をかけて揚げてください。
飼育はできますか
可能です。観賞用としても人気があります。
雑食性なので熱帯魚の餌や冷凍アカムシなどを食べます。ただし縄張り意識が強く同種間や他の魚に対して攻撃的になることがあるため隠れ家を多く用意するか単独飼育が望ましいです。また酸欠に弱いためエアレーションは必須です。
寄生虫はいますか
淡水のエビには寄生虫がいる可能性がありますがテナガエビに関しては肺吸虫などの中間宿主になるリスクは比較的低いとされています。しかし生の状態で食べるのは食中毒のリスクがあるため絶対に避けてください。必ず中まで火が通るように加熱調理して食べるのが鉄則です。































