スベスベマンジュウガニ

思わず口に入れたくなるような美味しそうでユーモラスな名前と、丸みを帯びた愛らしいフォルムを持つスベスベマンジュウガニ。しかし、その実態は「絶対に食べてはいけない」猛毒を持つ危険生物です。磯遊びや潮干狩りで偶然見つかることも多く、子供たちが不用意に触れてしまうこともある身近なカニですが、その体内にはフグ毒として知られるテトロドトキシンや麻痺性貝毒をたっぷりと蓄えています。名前のインパクトと毒性のギャップで有名なこのカニの生態と、見つけた際の注意点について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | エビ目(十脚目)オウギガニ科スベスベマンジュウガニ属 |
| 標準和名 | スベスベマンジュウガニ |
| 漢字 | 滑々饅頭蟹 |
| 別名 | 毒ガニ、マンジュウガニ |
| 学名 | Atergatis floridus |
| 英名 | Floral egg crab |
| 季節 | 通年 |
| 生息域 | 千葉県以南の岩礁帯、サンゴ礁 |
スベスベマンジュウガニとは
スベスベマンジュウガニは、インド太平洋の熱帯から温帯海域に広く分布するオウギガニ科のカニです。
名前の由来は、甲羅の表面に突起や毛がなく滑らか(スベスベ)であることと、全体的に丸みを帯びてふっくらとした形が饅頭(マンジュウ)に似ていることから来ています。
そのコミカルな名前からネット上のキャラクターやグッズのモチーフとして人気を博すこともありますが、動物界でもトップクラスの強力な毒を持つ生物であることを忘れてはいけません。鮮やかな見た目は「毒があるぞ」という警告色であるとも考えられています。
スベスベマンジュウガニの特徴
甲幅(甲羅の幅)は5センチメートルから8センチメートルほどの手のひらに収まるサイズです。
甲羅は横長の楕円形で非常に分厚く、表面は名前の通りツルツルとしています。
体色は赤褐色から紫褐色で、甲羅の表面には淡い色をした独特の虫食い状の模様があります。この模様は個体によって様々ですが、全体的に毒々しい美しさを持っています。
ハサミの先は黒くなっており、力は非常に強力です。動きは他のカニに比べてゆっくりとしており、逃げ足は遅いです。
猛毒(テトロドトキシン・サキシトキシン)
スベスベマンジュウガニの最大の特徴は、体内に蓄積された猛毒です。
筋肉や甲羅、内臓など全身に毒を持っており、その成分はフグ毒として有名な「テトロドトキシン」や、麻痺性貝毒の「サキシトキシン」「ゴニオトキシン」などです。
これらの毒は熱に非常に強く、煮ても焼いても分解されません。
誤って食べてしまうと、舌や唇のしびれ、嘔吐、呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は死に至る危険性があります。過去には味噌汁に入れて食べたことによる中毒事故も報告されています。
この毒はカニ自身が作っているのではなく、毒を持つプランクトンや貝類を食べることで体内に蓄積(生物濃縮)されたものです。
スベスベマンジュウガニの生態とライフサイクル
食性は雑食性ですが、主に貝類やゴカイ、海藻などを食べます。
夜行性であり、日中は岩の隙間や石の下に隠れていますが、夜になると餌を探して活動します。
生息域によって持っている毒の成分や強さが異なると言われていますが、どの地域の個体も有毒であることに変わりはありません。
天敵は少ないと思われますが、タコやイシダイなどはこのカニの毒に耐性を持っており、捕食することがあると言われています。
スベスベマンジュウガニの分布と生息環境
日本では千葉県房総半島から沖縄にかけての太平洋側沿岸に多く分布しています。
水深の浅い岩礁帯やサンゴ礁、転石帯(石がゴロゴロしている場所)を好みます。
磯遊びや潮干狩りができるような浅瀬にも生息しているため、石をひっくり返した際に見つかることがよくあります。動きが遅く簡単に捕まえられるため、子供が見つけてしまうケースも多いです。
注意点:見つけた場合
もし磯遊びや釣りでスベスベマンジュウガニを見つけても、以下の点を守ってください。
- 絶対に食べない: 煮ても焼いても毒は消えません。口に入れることは自殺行為です。
- 調理器具を使い回さない: もし他の魚と一緒に網やバケツに入れてしまった場合、粘液などに毒が含まれている可能性があるため、念のためよく洗浄してください。
- 触る際は注意: 皮膚から毒が吸収されることは通常ありませんが、傷口がある手で触れたり、触った手で目や口をこすったりするのは危険です。また、ハサミの力は強いため、挟まれないように注意が必要です。観察した後は必ず手を洗ってください。
まとめ
スベスベマンジュウガニは、その名の通りスベスベした愛らしい姿をしていますが、決して油断してはいけない海の危険生物です。「きれいなバラには棘がある」ならぬ「かわいいカニには毒がある」を地で行く存在です。磯遊びで出会った際は、その美しい模様とユーモラスな動きを観察するだけに留め、絶対に食卓には持ち込まないようにしてください。
スベスベマンジュウガニに関するよくある質問
触るだけでも危険ですか?
基本的には触るだけで中毒になることはありません。皮膚から毒が吸収されるタイプではないため、手に取って観察することは可能です。ただし、カニが傷ついて体液が出ている場合や、自分の手に傷がある場合は触れない方が無難です。また、触った後は必ず石鹸で手を洗ってください。
毒の強さはどれくらいですか?
個体差や地域差がありますが、1匹に含まれる毒の量は、成人数人を死に至らしめるのに十分な量(フグ数匹分に相当する場合も)が含まれていることがあります。特にサキシトキシンは青酸カリの1000倍以上の毒性を持つと言われる猛毒です。
似ているカニはいますか?
同じオウギガニ科の仲間には、似たような体型や模様を持つものが多くいます(ホシマンジュウガニやアカボシオウギガニなど)。これらの中にも有毒種が含まれているため、詳しくない場合は「派手な色や変わった模様のカニ」「動きの遅いカニ」は食べないというのが鉄則です。































