サルボウガイ

回転寿司や缶詰で「赤貝」として食べたその貝、実は本物のアカガイではなく、このサルボウガイかもしれません。サルボウガイはアカガイと非常によく似た外見と赤い身を持つ二枚貝で、古くからアカガイの代用品として、あるいは庶民の味として親しまれてきました。名前の由来は、ふっくらとした殻の形が「猿の頬(ほっぺた)」に似ていることから来ています。代用品といっても味は決して劣るものではなく、地域によっては「モガイ」と呼ばれ、郷土料理の主役として愛され続けています。本家アカガイとの決定的な見分け方である「放射肋(筋)」の数や、缶詰だけではない美味しい食べ方について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | フネガイ目フネガイ科サルボウガイ属 |
| 標準和名 | サルボウガイ |
| 漢字 | 猿頬貝 |
| 別名 | サルボウ、モガイ(西日本)、チガイ |
| 学名 | Anadara kagoshimensis |
| 英名 | Half-crenated ark |
| 季節 | 冬から春 |
| 生息域 | 東京湾以南の内湾、有明海、中海などの泥底 |
サルボウガイとは
サルボウガイは、日本の内湾の泥地に生息するフネガイ科の二枚貝です。
殻の幅は5センチメートルから7センチメートルほどで、アカガイよりもひと回り小さいサイズです。
最大の特徴は、アカガイと同様に血液中にヘモグロビンを含んでいるため、身が赤いことです。
名前の由来は、殻が白っぽく膨らんでおり、その形がエサを頬張った**「猿の頬(さるのほう)」**に似ていることから「サルボウ」と名付けられました。
有明海や中海(島根県・鳥取県)などが有名な産地です。
以前は「味付け赤貝」の缶詰の原料として大量に使われていましたが、近年は国産の漁獲量が減少し、貴重な食材になりつつあります。
アカガイとの違い(見分け方)
サルボウガイとアカガイは酷似していますが、殻の表面にある放射状の溝(放射肋・ほうしゃろく)の数を数えることで確実に見分けることができます。
【放射肋(筋)の本数】
- アカガイ:42本前後。殻が大きく、毛が生えていることが多いです。
- サルボウガイ:30本〜34本。アカガイより少なく、少し荒い印象です。
- サトウガイ:38本前後。両者の中間的な貝で、これも「赤貝」として流通することがあります。
【大きさと価格】
アカガイは殻長10センチメートルを超える大型になり、高級寿司ダネとして高値で取引されます。
一方、サルボウガイは小型で、価格もアカガイに比べれば手頃であり、惣菜や加工品向けとして流通します。
サルボウガイの漁
主に底引き網漁などで漁獲されます。
かつては日本各地の内湾で大量に獲れましたが、埋め立てや環境の変化により生息地が減少しています。
現在では島根県の中海や、有明海、瀬戸内海の一部が主要な産地となっています。
潮干狩りでアサリに混じって獲れることもありますが、泥の深い場所を好むため、狙って獲るのは難しいです。
食材としての評価
「アカガイの代用」というイメージが強いですが、味自体は非常に美味しい貝です。
身の食感はアカガイに比べてやや柔らかいものの、シャキシャキとした歯ごたえがあり、独特の甘みと磯の香りを持っています。
生食(刺身)も可能ですが、サイズが小さいため、煮付けや炊き込みご飯などの加熱調理で本領を発揮します。
特に岡山県などの郷土料理「ばら寿司」には欠かせない具材の一つです。
サルボウガイの料理
甘辛い味付けとの相性が抜群で、ご飯のおかずに最適です。
煮付け(含め煮)
サルボウガイの最もポピュラーな食べ方です。
剥き身にしたものを、醤油、砂糖、酒、生姜で甘辛く煮付けます。
缶詰の「赤貝の味付」でお馴染みのあの味ですが、生の貝から作ると身がふっくらとして香りも良く、格別の美味しさです。
モガイ飯(炊き込みご飯)
西日本では「モガイ」と呼ばれ、炊き込みご飯の具として愛されています。
茹で汁を使ってご飯を炊き、炊き上がりに煮付けた身を混ぜ込みます。
貝の旨味がご飯一粒一粒に染み渡り、何杯でも食べられる美味しさです。
酢の物・ぬた
湯通しした身を、キュウリやワカメと一緒に酢味噌や三杯酢で和えます。
さっぱりとした味わいの中に、貝の甘みと食感がアクセントになります。
刺身
鮮度の良い大きめの個体が手に入れば、刺身でも食べられます。
アカガイと同様に塩で揉んでヌメリを取り、開きにして盛り付けます。
アカガイほどの強烈な香りはありませんが、上品な甘みを楽しめます。
まとめ
サルボウガイは、猿の頬っぺたという愛嬌のある名前を持ち、日本の食卓を陰ながら支えてきた名脇役です。高級なアカガイには手が届かなくても、サルボウガイがあれば美味しい煮付けや貝ご飯を楽しむことができます。もし鮮魚コーナーで「赤貝(加熱用)」や「モガイ」として売られている小さな赤い貝を見つけたら、ぜひ殻の筋を数えてみてください。本数が30本前後なら、それは間違いなくこの美味しいサルボウガイです。
サルボウガイに関するよくある質問
缶詰の赤貝はこの貝ですか
はい、多くの「赤貝の味付」缶詰の原料は、このサルボウガイ(または近縁種のサトウガイ)です。
JAS法などの表示基準により、原材料名には正式名称(サルボウガイ)を書く必要がありますが、商品名として「赤貝」を使用することは許容されているケースが多いためです。
砂抜きは必要ですか
はい、必要です。
泥地に生息しているため、泥を噛んでいることが多いです。
海水程度の塩水に浸け、暗い場所に置いて砂(泥)を吐かせます。
殻の溝にも泥が詰まっていることがあるので、調理前に殻同士をこすり合わせてよく洗うことも大切です。
アカガイより味が落ちますか
生食(刺身)での香りや食感の迫力は、やはり本家アカガイの方が勝るとされます。
しかし、煮付けや炊き込みご飯などの加熱料理においては、サルボウガイの方が身が柔らかく、味が染み込みやすいため、こちらの方が美味しいという意見も少なくありません。
用途によって使い分けるのが正解です。































