シマガツオ

名前に「カツオ」と付きますが、カツオ(サバ科)の仲間ではありません。銀色に輝く円盤のような平たい体を持ち、むしろ「マナガツオ」や「マンボウ」にも似たユニークな姿をした深海性の魚です。釣り人や市場関係者の間では、昭和の時代から**「エチオピア」**という不思議な別名で呼ばれ続けてきました。かつてはマグロ延縄漁の外道(混獲される魚)として捨てられたり、安価な練り製品の材料にされたりしていましたが、実は「トロのような脂乗り」を持つ非常に美味しい魚であることが知れ渡り、近年ではスーパーの鮮魚コーナーでも見かける隠れた人気魚となっています。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | スズキ目シマガツオ科シマガツオ属 |
| 標準和名 | シマガツオ |
| 漢字 | 縞鰹 |
| 別名 | エチオピア、テツビン(鉄瓶) |
| 学名 | Brama japonica |
| 英名 | Pacific pomfret |
| 季節 | 秋から冬 |
| 生息域 | 北太平洋の温帯・亜熱帯域、水深200m〜400m |
シマガツオとは
シマガツオは、外洋の深場(中深層)を回遊する魚です。
体長は40センチメートルから50センチメートルほどになり、体は左右に平たく(側扁)、全体が金属のような光沢のある銀色や黒褐色をしています。
最大の特徴は、硬いウロコに覆われた体と、大きく発達した背ビレと尻ビレです。
標準和名の「シマガツオ(縞鰹)」は、生きている時や興奮した時に、体に横縞模様が浮かび上がることに由来しますが、死ぬとこの模様は消えて単色になってしまうため、市場で見るときは「縞がないのにシマガツオ」という状態がほとんどです。
マグロやカツオを狙った延縄漁(はえなわりょう)で大量に掛かることがあり、古くから漁師には馴染み深い魚でした。
なぜ「エチオピア」と呼ばれるのか
この魚を語る上で欠かせないのが、**「エチオピア」**という有名な通称です。
昭和初期(1930年代頃)、イタリアとエチオピアの間で戦争が起きたり、エチオピアの皇族が日本を訪問したりと、日本国内で「エチオピア」という国名が話題になっていました。
ちょうどその頃、このシマガツオが大量に水揚げされ、市場に出回ったため、当時の流行語のように「これはエチオピアだ」と呼ばれ定着したという説が最も有力です(諸説あり)。
現在でも市場や釣り人の間では「シマガツオ」より「エチオピア」の方が通じることがあります。
食材としての評価
見た目はゴツゴツしていて鱗も硬いですが、中身は脂の乗った極上の白身です。
身は柔らかく、クセのない味わいで、加熱するとマグロとブリの中間のような濃厚な旨味が出ます。
かつては「安かろう悪かろう」の惣菜魚扱いでしたが、近年ではその脂の乗りの良さが再評価され、回転寿司のネタや、スーパーの切り身(「沖ブリ」などの名で売られることも)として人気が出ています。
鮮度が落ちやすいため、刺身で食べられるのは釣り人の特権か、産地ならではの贅沢です。
シマガツオの料理
鱗が非常に硬くて取りにくいのが難点ですが、それさえクリアすればどんな料理にも合います。
刺身・タタキ(※注意点あり)
釣りたてや高鮮度のものは刺身が絶品です。
「全身トロ」と言われるほど脂があり、口の中でとろけます。
身が柔らかいので、厚めに切るのがコツです。
皮目を炙った「タタキ」にすると、香ばしさが加わり、余分な脂が落ちて食べやすくなります。
※アニサキスなどの寄生虫がいる場合があるため、一度冷凍するか、薄く切って目視確認するなどの注意が必要です。
煮付け
シマガツオの定番料理です。
加熱しても硬くならず、脂が煮汁に溶け出して濃厚な味になります。
冷めると煮凝りができるほどコラーゲンも豊富です。
フライ・ムニエル
洋風料理との相性が抜群です。
脂が多いので、油で揚げたり焼いたりしてもパサつかず、ジューシーに仕上がります。
タルタルソースやバター醤油によく合います。
味噌漬け・西京焼き
脂の多い魚は味噌との相性が最高です。
味噌に漬け込むことで、余分な水分が抜けて身が締まり、旨味が凝縮されます。
お弁当のおかずにも最適です。
調理のコツ(硬い鱗)
シマガツオの鱗(ウロコ)は、鎧のように硬く、しっかりと埋まっています。
普通のウロコ取りでは飛び散るだけでなかなか取れません。
家庭で調理する場合は、**「すき引き(包丁でウロコごと皮を薄く削ぎ取る方法)」**にするか、金たわしで強く擦る、あるいは皮ごと剥いでしまうのが手っ取り早いです。
まとめ
シマガツオは、「エチオピア」という不思議な愛称で昭和の食卓を支え、令和の今、その美味しさで再び注目を集めている深海の魚です。カツオのような血合いの酸味はなく、むしろブリやマナガツオに近い、脂の乗った白身魚です。スーパーで「シマガツオ」や「エチオピア」という名前を見かけたら、その硬い鱗の下に隠された、とろけるような脂の旨味をぜひ体験してみてください。
シマガツオに関するよくある質問
カツオとは味が違いますか
はい、全く違います。
カツオ(サバ科)は赤身魚で、鉄分と酸味のあるサッパリとした味が特徴ですが、シマガツオは白身魚(見た目は赤っぽくても分類上は白身に近い扱い)で、酸味はなく、脂の甘みとコッテリ感が特徴です。
食感もカツオより柔らかいです。
どこで買えますか
一般的なスーパーでも、切り身コーナーで「シマガツオ」や「沖ブリ」などの名前で売られていることがあります。
また、関東近郊の鮮魚店などでは、丸ごとの状態で安く並んでいることもあります。
回転寿司の「ビントロ」の代用魚として使われていた時期もあると言われています。
マナガツオとは違いますか
はい、違います。
マナガツオは、瀬戸内海などで獲れる超高級魚で、形は似ていますが、ウロコが剥がれやすく表面がつるっとしています。味は繊細で上品です。
シマガツオはもっと大衆的な魚で、ウロコが大きくザラザラしています。
名前も形も似ていますが、値段の桁が違うことが多いです。































