ゴマモンガラ

ダイバーやシュノーケラーにとってサメ以上に恐れられている海のギャングことゴマモンガラ。繁殖期には巣を守るために凶暴化し自分の何倍もの大きさがある人間に向かって突進してくることがあります。強靭な顎と鋭い歯はウエットスーツやフィンを容易に貫通し噛み付かれたら大怪我は避けられません。その一方で沖縄県などでは食用として流通しており鶏肉のような弾力のある白身は非常に美味であることでも知られています。美しいサンゴ礁の海に潜む危険な一面と知られざる食材としての魅力について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | フグ目モンガラカワハギ科ゴマモンガラ属 |
| 標準和名 | ゴマモンガラ |
| 漢字 | 胡麻紋柄 |
| 別名 | カーハジャー(沖縄)、海のギャング |
| 学名 | Balistoides viridescens |
| 英名 | Titan triggerfish / Moustache triggerfish |
| 季節 | 通年(繁殖期は夏) |
| 生息域 | 相模湾以南のサンゴ礁、岩礁帯 |
ゴマモンガラとは
ゴマモンガラはモンガラカワハギ科の中で最大級の大きさを誇る海水魚です。
名前の由来は体表のウロコの縁が黒くゴマ(胡麻)をまぶしたような模様に見えることから胡麻紋柄(ゴマモンガラ)と名付けられました。
英名ではタイタントリガーフィッシュと呼ばれその巨体と強さを象徴しています。
普段は単独でサンゴ礁や岩場を泳ぎ回りウニや貝類をバリバリと噛み砕いて食べるおとなしい魚ですが産卵期になると性格が一変します。卵を守るために非常に攻撃的になりテリトリーに侵入するものは何であろうと攻撃します。
その凶暴性からダイビング業界では最も遭遇したくない魚の一つとして認知されており講習で危険生物として必ず教わる存在です。
ゴマモンガラの特徴
体長は50センチメートル前後が多く最大で75センチメートルに達します。
体はずんぐりとしており厚みがあります。
体色は全体的に黄色味を帯びた茶褐色でウロコの一枚一枚が大きく硬いです。顔のあたりには不規則な模様があり口の上(唇の上)に黒い帯状の模様があるのが特徴です。これが口ひげのように見えるためムスタッシュ(口ひげ)トリガーフィッシュとも呼ばれます。
口にはペンチのような強力な歯が並んでおり硬い石灰質のサンゴやウニの殻も簡単に噛み砕くことができます。
背ビレにはトリガー(引き金)と呼ばれる太い棘があり普段は寝かせていますが興奮するとピンと立てて威嚇します。この棘を立てると岩の隙間から引き抜くことが困難になります。
ゴマモンガラの生態と危険性
食性は雑食性ですが肉食傾向が強くウニやカニ貝類サンゴなどを捕食します。
最も注意が必要なのは夏(6月から9月頃)の繁殖期です。
メスは砂地にすり鉢状の巣を作り卵を産み孵化するまでその場を離れずに守ります。この時の縄張り意識は異常なほど強く巣を中心とした逆円錐形の空間に侵入してくる生物に対して猛烈なスピードで突進し噛み付いて追い払おうとします。
このテリトリーは上方向にも広がっているためゴマモンガラを見かけて慌てて水面へ急浮上するとかえって攻撃対象になり続け危険です。もし遭遇してしまった場合はゴマモンガラから目を離さずに低い姿勢を保ったまま横方向へ泳いでテリトリーから離れるのが正解です。
噛む力は非常に強く指を食いちぎられたり耳を噛まれたりする事故も発生しています。
ゴマモンガラの分布と生息環境
日本では相模湾以南の太平洋側や琉球列島小笠原諸島に分布しています。
特に沖縄県や奄美群島などのサンゴ礁が発達した海域に多く生息しています。
水深50メートル以浅の浅い海を好みリーフエッジ(サンゴ礁の縁)やドロップオフ(急斜面)付近砂地と岩場が混在するエリアなどでよく見られます。海水浴場内に入り込んでくることもあるためシュノーケリング中も注意が必要です。
ゴマモンガラの料理
調理が大変な魚ですが味は一級品です。
その理由は鎧のように硬くてザラザラした皮にあります。包丁が入りにくいため皮を剥ぐにはペンチを使ったり切れ込みを入れて力ずくで剥がしたりする必要があります。沖縄の方言名カーハジャーは皮剥ぎ(かわはぎ)という意味があります。
唐揚げ
最もポピュラーで美味しい食べ方です。
身は繊維が太くしっかりとしており加熱すると鶏肉のような食感になります。適度な脂と旨味がありスパイスを効かせて揚げると魚とは思えないジューシーな味わいを楽しめます。
鍋料理・汁物
ぶつ切りにして鍋や味噌汁に入れると良い出汁が出ます。
身は煮崩れせずプリプリとした弾力を保ちます。フグに近い仲間であるため上品な白身の旨味がありポン酢との相性が抜群です。
刺身
新鮮なものは刺身でも食べられます。
血合いが美しく見た目はカツオやマグロに似ていますが味は淡白で甘みがあります。ただしシガテラ毒のリスクがゼロではないため大型の個体や内臓の食用は避けた方が無難とされる場合もありますが一般的に沖縄では美味しく食べられています。
まとめ
ゴマモンガラは海の中で出会うと恐怖を感じる存在ですが陸に上がれば美味しい食材へと変わります。その強烈な個性と生命力は自然界の厳しさを教えてくれると同時に南国の食文化を支える恵みでもあります。もしダイビング中に見かけたら決して近づかず遠くからそのふてぶてしい姿を観察するだけに留めてください。そして居酒屋のメニューで見つけたらその鶏肉のような意外な美味しさを堪能してみるのが一番安全な付き合い方です。
ゴマモンガラに関するよくある質問
毒はありますか
ゴマモンガラ自体に毒針や毒腺はありません。しかし熱帯海域に生息する大型の個体は食物連鎖によってシガテラ毒という自然毒を体内に蓄積している可能性があります。シガテラ毒を持つ魚を食べると吐き気や温度感覚異常(ドライアイスセンセーション)などの食中毒症状を引き起こすことがあります。必ず中毒になるわけではありませんが大型個体を食べる際は注意が必要です。
襲われたらどうすればいいですか
パニックにならずに落ち着いて対処することが重要です。ゴマモンガラの縄張りは巣を中心とした逆円錐形(上に行くほど広がる形)をしています。そのため水面に向かって逃げるといつまでも縄張りから出られず執拗に追撃されます。底を這うようにして横方向に移動し縄張りから出ることを優先してください。フィンを相手に向けて防御姿勢をとるのも有効です。
釣りの対象になりますか
強烈な引きと重量感があるためゲームフィッシングのターゲットとして一部で人気があります。強靭な顎で針を折られたりハリスを切られたりすることも多く釣り上げるには相応のタックルが必要です。専門に狙うというよりは石鯛釣りやブッコミ釣りの強烈な外道として掛かることが多いです。































