アオブダイ

全身が鮮やかなコバルトブルーに覆われ成長すると頭部がコブのように突き出る迫力ある姿のアオブダイ。南国の海を思わせるその美しい魚体は水族館などでは人気者ですが食卓においては死に至る危険性を秘めた恐怖の魚でもあります。内臓にパリトキシンという猛毒を蓄積しており過去にはこれを食べて死亡した事例も報告されています。釣り人の間では強烈な引き味で知られるターゲットですが一般的なブダイ(イガミ)のオスも青色をしているため混同されやすく注意が必要です。美しい見た目に隠された危険な罠と安全なブダイとの見分け方について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | スズキ目ベラ科アオブダイ属 |
| 標準和名 | アオブダイ |
| 漢字 | 青舞鯛、青武鯛 |
| 別名 | ウー、ゲンノウ、イラブチャー(沖縄の近似種) |
| 学名 | Scarus ovifrons |
| 英名 | Knobsnout parrotfish |
| 季節 | 通年(食用不適) |
| 生息域 | 本州中部以南の岩礁帯、サンゴ礁 |
アオブダイとは
アオブダイは東京湾や相模湾以南の太平洋側や日本海西部琉球列島などに分布する大型のベラ科の魚です。
名前の通り全身が青く岩礁帯で海藻や付着生物をかじり取る姿はダイバーにもお馴染みの光景です。
沖縄料理で有名なイラブチャー(ナンヨウブダイなど)の仲間であり見た目もよく似ていますが本州で見られる標準和名アオブダイは内臓に猛毒を持っている点が決定的に異なります。
厚生労働省からも注意喚起がなされており販売自粛を指導されている地域もありますが知識のない釣り人が持ち帰って調理し中毒を起こす事故が後を絶ちません。
アオブダイの特徴
体長は80センチメートル前後に達する大型魚です。
成魚の体色は鮮やかな青色や青緑色をしておりウロコの縁がピンク色やオレンジ色に彩られることもあります。
最大の特徴は頭の形状と歯です。成魚になると額(前頭部)がナポレオンフィッシュのように前方に大きく突き出しコブ状になります。また歯は上下の顎で癒合しておりオウムのクチバシのような強力な形状になっています。この歯で岩に付いたカキやフジツボサンゴごとバリバリと噛み砕きます。
尾ビレの両端が長く伸びているのも特徴の一つです。
猛毒パリトキシンについて
アオブダイが持つ毒はパリトキシンと呼ばれる物質です。これはフグ毒であるテトロドトキシンよりも強力とされる猛毒であり自然界最強の毒素の一つと言われています。
この毒はアオブダイ自身が生成するのではなく餌となるスナギンチャク類に含まれる毒を体内に蓄積することで毒化します。主に肝臓や消化管などの内臓に高濃度で蓄積されますが筋肉(身)にも移行する可能性があります。
中毒症状は食べてから数時間から十数時間後に激しい筋肉痛や呼吸困難手足のしびれ尿が黒くなる(ミオグロビン尿)などの症状が現れます。重症化すると腎不全やショック症状を引き起こし最悪の場合は死に至ります。加熱しても毒は分解されないため味噌汁や煮付けにしても危険性は変わりません。
アオブダイの生態とライフサイクル
食性は雑食性ですが成長に伴い海藻や固着生物を食べる傾向が強くなります。
岩肌の藻類や甲殻類を岩ごと削り取るようにして食べるため胃の中には大量のサンゴのかけらや石灰質が含まれています。
昼行性であり夜になると岩陰やサンゴの隙間で眠ります。この際口から粘液を出して透明な寝袋のような膜を作りその中で眠るというユニークな習性を持っています。これは寄生虫やウツボなどの外敵から身を守るためと考えられています。
ベラ科の魚特有の性転換を行いメスからオスへと変化します。
安全なブダイとの見分け方
最も重要なのは無毒で美味しい標準和名ブダイ(通称イガミ)との見分け方です。ブダイのオスも青色をしておりアオブダイと呼ばれることがありますが全く別の魚です。
頭の形
アオブダイは成魚になると額がコブのように突き出て角張っています。一方ブダイは頭が丸くなだらかなカーブを描いています。
歯の形状
アオブダイの歯は癒合して一枚の板(クチバシ状)になっており表面はツルッとしています。一方ブダイの歯は癒合していますがギザギザとした切れ込みが見え一本一本の歯の形跡が残っています。
尾ビレの形
アオブダイの尾ビレは上下の端が糸状に長く伸びていますがブダイの尾ビレは丸みを帯びており長く伸びません。
アオブダイの釣り
石鯛釣りやメジナ釣りの外道として掛かることが多くその引きは強烈です。
80センチメートルを超える巨体が岩礁帯を暴れ回るため竿をのされるほどのパワーがあります。
釣り上げるとその青さと大きさに圧倒されますが前述の通り毒のリスクが極めて高いため食べることは推奨されません。
もし釣れた場合は素手で口元に触れないように注意しながら(強力な顎で指を噛みちぎられる危険があります)速やかにリリースするのが賢明です。
まとめ
アオブダイはその美しい姿に反して死の危険を孕んだ魚です。ブダイという名前がついているため美味しい魚だと勘違いされやすいですがその一口が命取りになる可能性があります。海の中で優雅に泳ぐ姿を観察する分には素晴らしい魚ですがクーラーボックスに入れるべきではありません。正しい知識と見分ける目を持ち安全に釣りや魚食を楽しむことが大切です。
アオブダイに関するよくある質問
身だけなら食べられますか
筋肉(身)の毒性は内臓に比べて低いとされていますが個体によっては身からも毒が検出されることがあります。また調理中に内臓を傷つけて毒が身に移る可能性も高いため食べるべきではありません。命を賭けてまで食べる味ではないと心得てください。
沖縄のイラブチャーとは違うのですか
沖縄でイラブチャーと呼ばれる魚にはナンヨウブダイやヒブダイなど複数の種類が含まれます。これらはアオブダイに近い仲間ですが一般的に食用とされ毒化のリスクは低いとされています(ただしシガテラ毒のリスクはあります)。本州で見られる標準和名アオブダイとは種類が異なるため混同しないように注意が必要です。
中毒になった場合の対処法は
パリトキシンに対する有効な解毒剤は存在しません。もしアオブダイを食べて筋肉痛や黒い尿などの症状が出た場合は直ちに医療機関を受診しアオブダイを食べたことを伝えてください。対症療法による治療が行われますが一刻を争う事態になることもあります。































