ムラサキイガイ

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パエリアやワイン蒸しなど、地中海料理には欠かせない食材「ムール貝」。その正体が、日本の港やテトラポットにびっしりと張り付いている黒い貝、ムラサキイガイです。明治時代以降に海外から船底に付着して持ち込まれた外来種ですが、現在では日本中の沿岸を占拠し、在来種のイガイを駆逐するほどの繁殖力を見せています。釣り人にとっては、クロダイ(チヌ)やイシダイの特効エサとしてお馴染みですが、「汚い場所にいる」「毒があるかもしれない」というイメージから、自分で採って食べる人は少数派かもしれません。しかし、水質の良い場所で育った個体は、市販のムール貝と変わらない濃厚な旨味を持っています。世界中で愛されるその味と、野生のものを食べる際の重大な注意点(貝毒)、そしてエサとしての利用価値について解説します。

項目内容
分類イガイ目イガイ科イガイ属
標準和名ムラサキイガイ
漢字紫胎貝
別名ムール貝、カラスガイ(釣り用語)、ニタリガイ
学名Mytilus galloprovincialis
英名Mediterranean mussel / Blue mussel
季節冬から春(産卵前が身入りが良い)
生息域日本全国の潮間帯、内湾の岸壁やブイ
目次

ムラサキイガイとは

ムラサキイガイは、地中海原産のイガイ科の二枚貝です。

日本では1930年代頃から定着が確認され、今では北海道から沖縄まで全国各地で見られます。

岸壁やブイ、テトラポットなどの人工物に足糸(そくし)と呼ばれる糸を出して集団で付着し、時には「イガイ団子」と呼ばれるほどの塊を作ります。

フランス料理やイタリア料理で高級食材として扱われる「ムール貝」は、主に本種や近縁のヨ-ロッパイガイのことを指します。

日本では、工場地帯や汚れた港湾部でも繁殖するため「汚い貝」というレッテルを貼られがちですが、食材としてのポテンシャルは極めて高いです。

ムラサキイガイの特徴

【見た目】

殻長は5センチメートルから10センチメートルほど。

真っ黒に見えますが、光に当てると美しい青紫色や濃い紫色をしていることから「ムラサキイガイ」の名がつきました。

形は「しずく型」や「くさび型」をしており、先端が尖って後ろが丸くなっています。

在来種の「イガイ」と似ていますが、イガイは殻の表面が少し茶色っぽく、断面が丸みを帯びているのに対し、ムラサキイガイは平べったく、底面が少し内側に湾曲しています。

【強力な足糸】

殻の隙間から、無数の丈夫な糸(足糸)を出して岩に張り付きます。

この糸は非常に強力で、台風の波でも剥がれないほどの接着力を持っています。

調理の際は、このヒゲのような糸を取り除く必要があります。

食材としての評価と「貝毒」のリスク

【味の評価】

味は一級品です。

濃厚な磯の香りと、貝特有のコハク酸由来の強い旨味があり、加熱すると良い出汁が出ます。

身は柔らかくクリーミーで、オレンジ色(メス)や乳白色(オス)をしています。

【重要:食べる際の注意点】

野生のムラサキイガイを食べる際は、以下のリスクを理解しておく必要があります。

  1. 貝毒(かいどく):二枚貝はプランクトンを濾過して食べるため、毒性のあるプランクトンが発生している時期(特に春から夏の赤潮発生時)に食べると、麻痺性や下痢性の貝毒に当たる可能性があります。市販品は検査されていますが、野生のものは自己責任です。
  2. 水質汚染:重金属や化学物質が蓄積されやすいため、工場排水が流れ込む場所や、生活排水で汚れた港湾部のものは避けるべきです。潮通しの良い、きれいな外洋に面した場所のものを採取しましょう。

釣りエサとしての利用

釣り人にとっては「カラスガイ」という通称で呼ばれ、最強の現地調達エサとして重宝されています。

対象魚

クロダイ(チヌ):ヘチ釣りや落とし込み釣りのメインベイトです。殻ごとバリバリと砕いて食べる姿は圧巻です。

イシダイ:撒き餌として潰して使い、付け餌としても殻ごと針に掛けます。

コブダイ:堤防の怪物コブダイも、この貝が大好物です。

使い方

壁に付いている貝を、専用の「イガイ取り器」やタモの柄の金具で削ぎ落として採取します。

針への付け方は、貝の隙間に針を差し込み、貝柱を縫うように通すか、繊維状の足糸に針を絡ませて固定します。

ムラサキイガイの料理

安全な海域で採取したもの、または市販の冷凍ムール貝を使った定番料理です。

ワイン蒸し(ムール・マリニエール)

最もポピュラーな食べ方です。

ニンニクとオリーブオイルで香りを出し、洗った貝を入れて白ワインを注ぎ、蓋をして蒸します。

貝の口が開いたら完成。

貝から出る塩気と旨味だけで、スープまで美味しくいただけます。

残ったスープにパスタを入れるのがお約束です。

パエリア

魚介のサフランライス、パエリアには欠かせない具材です。

殻付きのまま乗せることで、見た目の豪華さと濃厚な出汁をプラスします。

香草パン粉焼き

殻を開き、身の上にニンニク、パセリ、パン粉、オリーブオイルを混ぜたものを乗せてオーブンで焼きます。

サクサクのパン粉とジューシーな身がよく合います。

まとめ

ムラサキイガイは、日本の海辺を占拠する外来種でありながら、世界の食卓を支える「ムール貝」そのものです。釣り人にとってはタダで手に入る特効エサであり、料理人にとっては素晴らしい出汁が出る食材です。ただし、野生の二枚貝には常に「貝毒」という見えないリスクが付きまといます。きれいな海で育ったものを適切に処理して食べる分には最高のご馳走ですが、不安な場合は市販の検査済みムール貝を利用し、野生のものは魚のエサにするのが賢明な付き合い方かもしれません。

ムラサキイガイに関するよくある質問

淡水にいるカラスガイと同じですか

いいえ、全く別の貝です。

淡水の池や沼にいる「カラスガイ」は、イシガイ科の巨大な二枚貝で、タナゴの産卵母貝になるものです。

海釣りで「カラスガイ」と呼ばれるのは、色がカラスのように黒いことからついた俗称で、正体はこのムラサキイガイです。

混同しやすいので注意してください。

ヒゲ(足糸)はどうやって取りますか

加熱する前に取る方法と、加熱後に取る方法があります。

加熱前に取る場合は、貝の蝶番(尖っていない方)に向かって、足糸を強く引っ張ると引き抜けます(反対に引くと身が切れます)。

ただ、活きたまま引くと貝が弱って旨味が逃げるため、加熱して口が開いてから、食べる時に手で摘んで取るのが一番簡単で美味しく食べられます。

いつが旬ですか

産卵期前の**冬から春(12月〜4月頃)**が身が太っていて美味しい旬です。

夏場は産卵を終えて身が痩せていることが多く、また赤潮による貝毒のリスクも高まるため、食用にはあまり向きません。

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この記事を書いた人

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