ムラサキダコ

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海中を漂う巨大な紫色のマントを広げたような姿から英名ではブランケットオクトパスと呼ばれるムラサキダコ。その優雅で神秘的な見た目とは裏腹に自然界でもトップクラスの極端な体格差カップルとして知られています。メスは体長1メートル近くに成長しますがオスはわずか数センチメートルしかありません。普段は外洋の浅い層を遊泳しているためダイバー以外が海中で遭遇することは稀ですが台風の後などに浜辺に打ち上げられるとニュースになることがあります。敵に襲われると自慢のマントを切り離して囮にするというトカゲの尻尾切りのような護身術を持つこのタコの生態や驚愕の繁殖行動そして水っぽいと言われる身を美味しく食べる知恵について解説します。

項目内容
分類八腕形目ムラサキダコ科ムラサキダコ属
標準和名ムラサキダコ
漢字紫蛸
別名コロモダコ、ハゴロモダコ
学名Tremoctopus violaceus
英名Common blanket octopus
季節秋から冬
生息域世界中の熱帯・亜熱帯の外洋域
目次

ムラサキダコとは

ムラサキダコは世界中の暖かい海の外洋表層を漂って生活しているタコです。

岩場や海底の穴に潜むマダコなどとは異なり一生を海中で浮遊して過ごします。

名前の通り全身が鮮やかな赤紫色をしており特に背中側が濃い色をしています。

非常に薄く発達した膜を腕の間に持っておりこれを広げて泳ぐ姿は天女の羽衣のようであることからハゴロモダコと呼ばれることもあります。

日本近海では暖流に乗ってやってくるため対馬暖流や黒潮の影響を受ける地域で目撃例が多く冬場に季節風で海岸に漂着することがあります。

市場に流通することはほとんどありませんが定置網などで混獲されることがあり一部の地域では食用にされます。

ムラサキダコの特徴

このタコの最大の特徴はメスの腕にある巨大な飛膜です。

メスは成長すると体長70センチメートルから大きいものでは1メートル近くになりますがその長さの大部分はこの膜と腕が占めています。

危険を感じるとこの膜を大きく広げて体を巨大に見せ威嚇します。

さらに執拗に追われると膜を自ら切り離して海中に漂わせその隙に逃走します。

切り離された膜はしばらくの間ゆらゆらと動くため捕食者の目を欺く囮として機能します。

またカツオノエボシなどの猛毒を持つクラゲの触手を千切って自分の吸盤にくっつけ武器として利用するという高度な知能と耐性を持っていることも知られています。

究極の格差婚

ムラサキダコのオスとメスの大きさの違いは脊椎動物や無脊椎動物を含めても最大級の差があります。

メスが最大で1メートル近くになるのに対しオスはなんと2センチメートルから3センチメートルほどしかありません。

重さにするとなんと数万倍もの差があり同じ種類の生物とは思えないほどです。

オスは非常に小さいため発見されること自体が稀でその生態には多くの謎が残されていました。

オスは右第3腕が交接腕(生殖用の特殊な腕)になっており精子の入ったカプセルを持っています。

交尾の際オスはこの腕を切り離してメスの体内に残し役目を終えるとすぐに死んでしまいます。

メスは受け取った精子を使って受精し数十万個の卵を産み孵化するまで大切に抱えて守ります。

味と料理

一般的なタコと比べると身の質が大きく異なります。

筋肉質で歯ごたえのあるマダコに対しムラサキダコの身は非常に水分が多く柔らかいです。

茹でると驚くほど縮んでしまい食感も少しスポンジのように頼りないため不味いと評されることもあります。

しかし調理法を工夫すれば美味しく食べることができます。

茹でダコ・酢の物

茹でるとかなり小さくなりますが柔らかい食感を生かして酢味噌和えや酢の物にするとさっぱりと食べられます。

色はきれいな紫色になるため彩りは美しいです。

干物

水っぽい身を美味しく食べるための先人の知恵です。

内臓を取り除きしっかりと乾燥させることで余分な水分が抜けて味が凝縮されます。

これを炙って食べるとスルメのような食感と濃厚な旨味が生まれ酒の肴として絶品になります。

煮付け

柔らかいので煮付けにすると味がよく染みます。

里芋や大根と一緒に煮ると良い出汁が出ます。

まとめ

ムラサキダコは広大な外洋を旅するために独自の進化を遂げた神秘的なタコです。メスが広げる紫色のマントは美しくもあり生き残るための必死の盾でもあります。そしてその陰には数センチメートルの小さなオスたちの命をかけた愛の物語が存在しています。もし海辺で紫色の不思議な生き物が打ち上げられていたらそれは遠い海から流れ着いた貴婦人かもしれません。食べる際はぜひ干物にしてその旅の味を噛みしめてみてください。

ムラサキダコに関するよくある質問

毒はありますか

ムラサキダコ自体には人間に害のある毒はありません。

しかし幼体や若い個体は防御のために猛毒クラゲであるカツオノエボシの触手を持っていることがあります。

触手に触れると激しい痛みや腫れを引き起こす可能性があるため海で見かけても素手で触れるのは避けた方が無難です。

どこで見られますか

ダイビング中に外洋の表層で見られることがありますが確率は低いです。

最も遭遇率が高いのは日本海側の冬の海岸です。

強い北風が吹いた翌日などに波打ち際に弱って漂着していることがあります。

京都府や福井県山口県などでよく報告されています。

飼育はできますか

外洋性のタコであり飼育は極めて困難です。

水質の変化や壁への衝突に弱く水族館でも長期飼育の成功例はほとんどありません。

生きた姿を見ることができたら非常に幸運なことです。

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この記事を書いた人

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