マガキ

「海のミルク」と称されるほど濃厚な栄養と旨味を持ち冬の味覚の王様として君臨するマガキ。日本で流通しているカキのほとんどはこのマガキであり広島県や宮城県などを中心に養殖が盛んに行われています。ゴツゴツとした岩のような殻の中にはプルプルとした乳白色の身が詰まっており生で食せば磯の香りとクリーミーなコクが口いっぱいに広がります。欧米では「Rのつかない月(5月から8月)にはカキを食べるな」という言葉がありますがこれは産卵期を迎える夏場のマガキは身が痩せて水っぽくなり食中毒のリスクも高まるためです。世界中で愛されるこの貝の生態や夏が旬のイワガキとの違い、天然物を採取する際のルールと注意点、そして栄養満点の美味しい食べ方について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | カキ目イタボガキ科マガキ属 |
| 標準和名 | マガキ |
| 漢字 | 真牡蠣 |
| 別名 | カキ、セカキ |
| 学名 | Crassostrea gigas |
| 英名 | Pacific oyster |
| 季節 | 冬(11月〜2月) |
| 生息域 | 日本全土の沿岸、内湾の潮間帯 |
マガキとは
マガキは日本を含む東アジア原産のイタボガキ科の二枚貝です。環境適応能力が非常に高く現在では北米やヨーロッパオーストラリアなど世界各地に移入され養殖されています。世界で食べられているカキの多くが実はこのマガキ(パシフィック・オイスター)です。波の静かな内湾や河口の汽水域を好み岩礁や護岸のコンクリートなどに左殻(膨らみのある方の殻)を固着させて生活しています。プランクトンを濾過して食べるため海水の浄化作用が高いことでも知られています。日本国内では広島県が生産量日本一を誇り次いで宮城県岡山県などが続きます。
マガキの特徴
殻の形や大きさは生息環境によって大きく変化します。密集して育つと細長くなり一匹だけで育つと丸くなる傾向があります。表面は幾重にも重なった薄い板状の層で覆われており非常に鋭利で不用意に触ると手を切ることがあります。殻を開けると真珠層の光沢がある内面があり中央には強力な閉殻筋(貝柱)があります。身はグリコーゲンやタウリン亜鉛などのミネラルを豊富に含んでおりこれが海のミルクと呼ばれる所以です。産卵期は夏から秋にかけてで一度に大量の卵を放出するためこの時期の身は急激に痩せて味が落ちます。
イワガキとの違い
夏に魚屋で見かける大きなカキはイワガキ(岩牡蠣)でありマガキとは別の種類です。以下の点で見分けることができます。
旬の違い
マガキの旬は「冬」ですがイワガキの旬は「夏」です。イワガキは数ヶ月かけてゆっくりと産卵するため夏でも身が痩せず美味しく食べられます。
大きさと殻の厚さ
イワガキの方が圧倒的に大きく殻も分厚くて重厚です。マガキは比較的殻が薄く小ぶりなものが多いです。
味の違い
マガキはコクのある濃厚なクリ―ミーさが特徴ですがイワガキは「海のチーズ」とも呼ばれ濃厚さの中にもジューシーでさっぱりとした味わいがあります。
マガキの採取と釣りでの利用
マガキは釣り竿で釣る対象ではありませんが潮干狩りのように磯や岸壁で採取することができます。ただしそれには重大なルールが存在します。
漁業権と密漁の禁止
日本の沿岸部のほとんどには漁業権が設定されておりカキはアワビやサザエと同様に第一種共同漁業権の対象となっている場所が極めて多いです。漁業権が設定されている場所で勝手にマガキを採取することは密漁となり法的に罰せられます。一般人が採取できるのは「漁業権が設定されていないエリア」または「潮干狩り場として開放されている場所」に限られます。必ず事前に管轄の漁協や自治体に確認してください。
採取方法
採取可能な場所であれば干潮時に岩や堤防に付着しているものを磯金(いそがね)やマイナスドライバーのような道具を使って剥がし取ります。殻が非常に鋭いため厚手のゴム手袋や軍手が必須です。
釣りのエサとしての利用
クロダイ(チヌ)釣りにおいてカキは特効エサとして知られています。特に「かかり釣り」や「落とし込み釣り」では殻付きのカキを砕いて撒き餌にし針に付けたカキの身を同調させて釣ります。エサ取り(小魚)に強くクロダイの大好物であるため冬場の釣りには欠かせないエサです。
食材としての評価と生食・加熱用
スーパーで売られているパックのカキには「生食用」と「加熱用」の表示がありますがこれは鮮度の違いではありません。保健所が指定した海域で獲れ浄化処理(滅菌海水で数日間飼育して体内の菌を排出させる)を行ったものが「生食用」です。一方栄養豊富な海域で育ち浄化処理を行わずにそのまま出荷されたものが「加熱用」です。加熱用の方が身が太っていて味が濃いことが多いですがノロウイルスなどのリスクがあるため必ず中心部まで火を通す必要があります。
マガキの料理
独特の風味と旨味はどんな料理にしても存在感を放ちます。生食する場合は必ず生食用を購入し体調が優れない時は避けるのが賢明です。
カキフライ
マガキ料理の代名詞です。サクサクの衣の中に熱々のエキスが閉じ込められており噛んだ瞬間に磯の香りが溢れ出します。タルタルソースやレモンで食べると脂っこさが中和されいくらでも食べられます。
土手鍋・カキ鍋
広島県の郷土料理である土手鍋は鍋の縁に味噌を塗りつけカキや野菜と一緒に煮込みます。味噌のコクとカキの旨味が融合し冬の寒さを吹き飛ばす濃厚な味わいになります。
蒸しガキ(カンカン焼き)
殻付きのマガキを缶や鍋に入れて少量の酒や水で蒸し焼きにします。焼くよりも身が縮みにくくふっくらとジューシーに仕上がります。バーベキューなどで人気のアウトドア料理です。
生ガキ
生食用をレモンやすだちポン酢でつるりと頂きます。口の中でとろける食感と鼻に抜ける潮の香りはカキ好きにとって至高の瞬間です。欧米風にワインビネガーやエシャロットを添えても美味です。
まとめ
マガキは世界中で愛される冬の味覚の代表選手です。その小さな体には海のエキスと人間が必要とする栄養素が凝縮されています。天然物を採取する際は漁業権の壁があるため注意が必要ですが釣りエサとしてクロダイと対峙するもよしスーパーで買い求めてカキフライや鍋で舌鼓を打つもよし楽しみ方は無限大です。「Rのつく月」になったらぜひこの海のミルクを食卓に並べて冬の訪れを感じてみてください。
マガキに関するよくある質問
生食用と加熱用の違いは何ですか
鮮度の違いだと思われがちですが実は「育った海域」と「浄化処理の有無」の違いです。生食用は細菌数の少ない指定海域で獲れさらに滅菌海水で数日間絶食させて体内の汚れを吐き出させたものです。加熱用は栄養豊富な海域で獲れたもので身が肥えていて味が濃いですが菌を持っている可能性があるため必ず火を通す必要があります。鮮度はどちらも変わりません。
殻はどうやって開けますか
専用のオイスターナイフまたはステーキナイフを使います。貝柱の位置(平らな殻の右側中央より少し上あたり)に見当をつけ殻の隙間からナイフを差し込みます。貝柱を切り離すと殻が自然と開きます。手を滑らせて怪我をしないよう必ず軍手を着用し濡れ布巾などでカキを固定して行ってください。
ノロウイルスが怖いです
ノロウイルスは二枚貝の内臓に蓄積される傾向がありますが中心部まで十分に加熱(85度から90度で90秒以上)すればウイルスは死滅します。加熱用を食べる際は中途半端な加熱を避けしっかりと火を通すことが重要です。生食する場合は体調が良い時に信頼できる生食用を選んで食べることがリスク回避につながります。































