ヒメジ

鮮やかな赤い体に、黄色いラインが走る美しい姿から「ヒメ(姫)」と名付けられた魚、ヒメジ。しかし、その顔をよく見ると、顎の下から2本の長い「ヒゲ」が生えており、その姿から釣り人の間では「オジサン」という不名誉な(?)愛称で呼ばれることもあります。実はこの魚、フランス料理では「ルージェ(Rouget)」と呼ばれ、フォアグラやトリュフと並んで珍重される超高級食材です。エビやカニを好んで食べるため、その身からはほのかに甲殻類の香りがし、皮目には独特の旨味があります。日本ではキス釣りの外道として扱われがちですが、捨ててしまうにはあまりにも惜しいこの魚の、ヒゲの秘密や「オジサン」との違い、そしてフレンチのシェフも認める味について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | スズキ目ヒメジ科ウミヒゴイ属 |
| 標準和名 | ヒメジ |
| 漢字 | 比売知、姫魚 |
| 別名 | オジサン(通称)、ベニサシ(関東)、キンタロウ、メンドリ |
| 学名 | Upeneus japonicus |
| 英名 | Bensasi goatfish |
| 季節 | 秋から冬 |
| 生息域 | 本州中部以南の砂泥底 |
ヒメジとは
ヒメジは、関東以南の暖かい海の砂泥底に生息する魚です。
鮮やかな赤やピンク色の体色が特徴で、見た目の艶やかさから古くは「姫魚」と書かれ、親しまれてきました。
最大の特徴は顎の下にある2本のヒゲで、これを海底の砂の中に差し込み、エサとなるゴカイやヨコエビなどの小動物を探し当てて食べます。
日本では練り製品の原料や干物として消費されることが多く、鮮魚としてスーパーに並ぶことは少ないですが、西洋料理の世界では「海のジビエ」とも称されるほど味が濃く、重要な食材として扱われています。
ヒメジの特徴と「オジサン」
【ヒゲのセンサー】
顎の下にある黄色い2本のヒゲには、味蕾(みらい)という味を感じる細胞が密集しています。
つまり、彼らはヒゲで砂の中を触るだけで「そこにエサがあるか」「どんな味がするか」が分かります。
砂煙を上げながらヒゲを動かしてエサを探す姿は愛嬌があります。
【オジサンとの違い】
釣り人の間では、ヒゲがある魚を総称して「オジサン」と呼ぶことが多いですが、標準和名としてのオジサンという魚も実在します。
- ヒメジ:体色が赤っぽく、尾ビレに赤と白の縞模様があります。本州の沿岸でよく釣れるのはこちらです。
- オジサン(標準和名):体色は茶色や紫色など変異が多く、体側に黒っぽい斑点があります。主に沖縄や南西諸島のサンゴ礁に生息しています。
ヒメジの釣り方
キス釣りの代表的な外道(ゲスト)です。
ポイントとシーズン
水深10メートルから50メートル前後の、底が砂や泥の場所を好みます。
シロギス(キス)と同じ場所に生息しているため、砂浜からの投げ釣りやボート釣りでよく掛かります。
シーズンは秋から冬にかけてが脂が乗って美味しくなります。
釣り方のコツ
底をズルズルと引いてくる「引き釣り」で、砂煙を立てると興味を持って寄ってきます。
エサはジャリメやアオイソメ。
アタリはキスよりも少し鈍く、重たい感じがします。
専門に狙う人は少ないですが、釣れたらラッキーな美味しいお土産です。
食材としての評価
「赤いダイヤ」とも呼ばれるほど、知る人ぞ知る美味な魚です。
身は水分がやや多い白身ですが、熱を通すと締まり、鶏肉のようなしっかりとした食感になります。
エビやカニを食べて育つため、身自体に甘みと独特の風味(甲殻類のような香り)があります。
特に皮の下に強い旨味成分があるため、皮を引かずに調理するのが美味しく食べるコツです。
小さいサイズは骨が気になりますが、唐揚げにすれば丸ごと食べられます。
ヒメジの料理
皮の旨味を活かした、焼き物や揚げ物が適しています。
ポワレ・ムニエル(フランス風)
ヒメジの真骨頂です。
三枚におろして塩コショウを振り、多めのオリーブオイルやバターで皮目からパリッと焼き上げます。
皮の香ばしさと、身から溢れる独特の風味がソースと絡み合い、レストランの味になります。
トマトソースやバジルソースとの相性が抜群です。
天ぷら・唐揚げ
キス釣りで混じった小型のヒメジは、開いて天ぷらにします。
キスよりも味が濃厚で、フワフワとした食感は「キスより美味い」と言う人もいるほどです。
骨まで揚げた骨煎餅も絶品です。
炙り刺身(焼き霜造り)
新鮮な良型が手に入ったら刺身も可能です。
ただし、皮に旨味があるので、皮を引かずにバーナーで皮目を炙る「焼き霜造り」にします。
香ばしさと脂の甘みが溶け出し、わさび醤油やポン酢で食べると非常に美味です。
干物
水分が多い魚なので、干物にすると味が凝縮されます。
一夜干しにして軽く炙ると、酒の肴に最高です。
まとめ
ヒメジは、「姫」という美しい名前と、「オジサン」のようなヒゲを併せ持つ、ギャップが魅力の魚です。釣り場では外道として海に返されがちですが、その正体はフレンチのシェフが喉から手が出るほど欲しがる高級食材「ルージェ」です。もしキス釣りでこの赤い魚が掛かったら、「なんだオジサンか」とがっかりせず、フランス料理のメインディッシュを手に入れたと思って持ち帰ってみてください。バターで焼くだけで、食卓がビストロに早変わりします。
ヒメジに関するよくある質問
どんな味がしますか
白身魚ですが、淡白すぎず、独特のコクと甘みがあります。
食性は甲殻類(エビ・カニ)中心なので、加熱するとほのかにエビのような香ばしい風味がするのが特徴です。
この風味が、バターや油と非常に良く合います。
ウミヒゴイとは違いますか
「ウミヒゴイ」はヒメジ科の魚の総称としても使われますが、標準和名「ウミヒゴイ」という魚もいます。
ウミヒゴイはヒメジよりも大型になり、主に岩礁帯に生息しています。
市場ではヒメジ類をまとめて「ヒメジ」や「ウミヒゴイ」、「オジサン」と呼ぶことがあり、混同されやすいです。
鱗は取りやすいですか
ヒメジの鱗は大きく、非常に剥がれやすいのが特徴です。
釣ってクーラーボックスに入れている間に、他の魚と擦れて鱗がほとんど取れてしまうこともあります。
調理の際は、包丁で軽くこするだけで簡単に取れますが、飛び散りやすいので注意してください。































