フグ

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「鉄砲」とも呼ばれ当たれば死ぬ猛毒を持ちながらその魔性の味で古来より日本人を虜にしてきた魚フグ。その毒の強さは青酸カリの千倍以上とも言われ一匹で数十人の命を奪う力を秘めています。しかしリスクを冒してでも食べたくなるその身は白身の王様と称されるほど淡白でありながら奥深い旨味を持っています。厳格な資格を持つ料理人によってのみ提供が許されるこの危険な美食の正体や恐るべき毒のメカニズムそして至高の味わいである「てっさ」や「てっちり」について解説します。

項目内容
分類フグ目フグ科
標準和名トラフグ(代表種)など多数
漢字河豚、鰒
別名テッポウ、フク(下関)
学名Takifugu rubripes(トラフグ)
英名Pufferfish / Blowfish
季節冬(秋の彼岸から春の彼岸まで)
生息域世界中の熱帯・温帯海域
目次

フグとは

フグはフグ目フグ科に属する魚の総称で世界中に約120種日本近海には約50種が生息しています。

名前の由来は腹を膨らませる様子から「ふく(膨)」が転じた説や海底で砂を吹く様子から来た説などがあります。

最大の特徴は敵に襲われると水や空気を吸い込んで腹を大きく膨らませ体を大きく見せて威嚇することです。

また上下の歯が癒合してクチバシ状になっておりその噛む力は非常に強く釣り針や貝殻を簡単に噛み切ってしまいます。

日本におけるフグ食の歴史は古く縄文時代の貝塚からもフグの骨が出土していますが中毒死する人も後を絶たず豊臣秀吉が「河豚食禁止令」を出したことでも知られています。

その後明治時代に伊藤博文が下関でフグを食しその味に感動して解禁したという逸話は有名です。

山口県の下関市はフグの集積地として知られここでは縁起を担いで「フク(福)」と呼ばれています。

猛毒テトロドトキシン

フグの体内にはテトロドトキシン(TTX)という神経毒が含まれています。

この毒は自然界最強クラスの毒性を持ち青酸カリの約1000倍の威力があるとされています。

主に肝臓(キモ)や卵巣などの内臓に含まれていますが種類によっては皮膚や筋肉(身)にも毒を持つものがいます。

テトロドトキシンは熱に非常に強く煮たり焼いたりしても分解されません。

摂取すると唇や指先の痺れから始まり言語障害や呼吸困難を引き起こし最終的には呼吸停止により死に至ります。

現在でも特効薬や解毒剤は存在しないため人工呼吸による対症療法しか助かる道はありません。

このためフグの調理には専門的な知識と技術が必要不可欠です。

主なフグの種類

食用となるフグにはいくつかの種類がありそれぞれ味や毒の部位が異なります。

トラフグ

フグの王様であり最も高値で取引される最高級品です。

胸ビレの後ろに大きな黒い斑紋があり尻ビレが白いのが特徴です。

味、歯ごたえ共に最高峰で養殖も盛んに行われています。

マフグ

トラフグに次ぐ高級フグで「ナメラフグ」とも呼ばれます。

トラフグよりも身が柔らかく甘みが強いのが特徴です。

体表に棘がなく滑らかです。

ショウサイフグ

関東の釣り船などで人気のターゲットです。

手頃な価格で鍋料理や唐揚げに使われますが内臓だけでなく皮膚にも毒があるため皮を剥ぐ処理が必要です。

クサフグ

堤防釣りでよく釣れる小型のフグです。

背中の緑色と斑点が特徴で内臓と皮膚に強毒を持つため一般的には食用にされません。

ふぐ調理師免許

フグを捌いて客に提供するには都道府県知事が定める「ふぐ調理師」や「ふぐ処理師」といった免許が必要です。

この試験は非常に難関で種類の鑑別や有毒部位の除去(除毒)を完璧に行う実技試験が含まれます。

免許を持たない一般人が見よう見まねでフグを調理することは自殺行為に等しく法律(食品衛生法)でも禁止されています。

釣れたフグを素人が調理して死亡する事故は毎年のように発生しています。

フグの料理

有資格者によって適切に処理されたフグは至福の味わいを提供してくれます。その身は脂肪分が極端に少なく高タンパクでコラーゲンが豊富です。

てっさ(フグ刺し)

フグの身は弾力が強すぎて普通の刺身の厚さでは噛み切れないため皿の絵柄が透けるほど薄く引きます。

これを箸で数枚まとめてすくい取りネギや紅葉おろしを添えたポン酢で食べるのが醍醐味です。

コリコリとした食感と噛むほどに湧き出る淡白な旨味は他の魚では味わえません。

てっちり(フグ鍋)

「鉄砲のちり鍋」を略しててっちりと呼ばれます。

昆布出汁で骨付きの身(アラ)と野菜を煮込みます。

フグから出る上品で濃厚な出汁は野菜を美味しくし締めの雑炊は黄金のスープを余すことなく味わえる絶品です。

フグの唐揚げ

骨付きの身をタレに漬け込んで揚げます。

熱を通すことで身がプリプリになり鶏肉のようなジューシーさと魚の旨味を同時に楽しめます。

白子焼き

オスの精巣である白子は「白いダイヤ」とも呼ばれる希少部位です。

焼くと表面は香ばしく中はトロトロのクリーム状で濃厚なコクがあります。

※卵巣(真子)は猛毒ですが石川県の一部の地域では数年間の塩漬けと糠漬けによって解毒する伝統的な「フグの卵巣の糠漬け」が存在します。

ヒレ酒

乾燥させて炙ったフグのヒレを熱燗に入れたものです。

香ばしい香りとフグの旨味が酒に移り琥珀色になったお酒は格別の味わいです。

まとめ

フグは毒と美味が表裏一体となった魅惑の魚です。その危険性ゆえに先人たちが命がけで築き上げた食文化と処理技術の結晶でもあります。冬の味覚の王様として特別な日に専門店でその味を堪能することは日本人に生まれた喜びの一つと言えるでしょう。ただし海で釣れた可愛らしいフグには決して素人包丁を入れてはいけません。

フグに関するよくある質問

養殖のフグには毒がないのですか

フグの毒は餌(毒を持つ貝やヒトデなど)から蓄積されるものであるため完全に管理された餌で育てた養殖フグには毒がない(無毒フグ)と言われています。

しかし現状では養殖環境への毒の侵入を100%防げているかの保証や無毒であることの公的な認定制度が完全ではないため天然と同様に有毒部位(肝臓など)を除去して提供することが法律で義務付けられています。

したがって養殖であっても肝を食べることは禁止されています。

旬はいつですか

「秋の彼岸から春の彼岸まで」と言われるように冬が旬です。

特に産卵前の冬場は身が充実し白子も大きくなるため最も美味しい時期とされています。

夏場のフグは「ナツフグ」と呼ばれ産卵を終えて痩せていることが多いですが種類によっては夏に美味しいものもいます。

釣りで釣れたらどうすればいいですか

素人は絶対に持ち帰って食べてはいけません。

免許を持つ知人がいても調理を頼むことは避けるべきです(個人の責任範囲を超えるため)。

またクサフグなどは鋭い歯で釣り糸を切ったり針を飲み込んだりするため釣り人には嫌われますが触っても毒はないのでフィッシュグリップなどで針を外してリリースしてください。

皮膚に毒がある種類もいますが触る程度では中毒になりません。

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この記事を書いた人

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