アカガイ

江戸前寿司における貝の王様として君臨しその鮮やかな赤色と芳醇な香りで食通を魅了するアカガイ。殻を開けると真っ赤な血が流れ出ることからその名が付けられましたがこれは人間と同じヘモグロビンを血液中に持っているためです。かつては東京湾で豊富に獲れ江戸前のネタとして欠かせない存在でしたが現在では漁獲量が激減し国産の天然物は超高級品となっています。スーパーの缶詰コーナーで見かける赤貝と寿司屋のアカガイが実は別の種類であることやこの貝が持つ独特の生理機能と美味しさの秘密について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | フネガイ目フネガイ科アカガイ属 |
| 標準和名 | アカガイ |
| 漢字 | 赤貝 |
| 別名 | 本玉、玉(タマ) |
| 学名 | Scapharca broughtonii |
| 英名 | Bloody clam / Ark shell |
| 季節 | 冬から春 |
| 生息域 | 北海道南部以南の内湾の泥底 |
アカガイとは
アカガイは内湾の浅い泥底に生息するフネガイ科の二枚貝です。
名前の由来は文字通り身や体液が赤いことにあります。多くの貝類の血液はヘモシアニンという銅を含む色素を持っているため無色か青っぽく見えますがアカガイは人間と同じ鉄を含むヘモグロビンを持っています。これにより酸素の薄い泥の中でも効率よく呼吸ができ生き抜くことができます。
寿司屋では高級ネタとして扱われますが回転寿司や缶詰煮付け用として流通している赤貝の多くは近縁種のサルボウガイ(猿頬貝)であることが一般的です。本物のアカガイは本玉(ほんだま)と呼ばれ区別されます。
アカガイの特徴
殻長は10センチメートルから12センチメートルほどになり大人の握り拳くらいの大きさがあります。
殻は分厚く硬く表面には放射肋(ほうしゃろく)と呼ばれる放射状の溝が走っています。
アカガイと他の似ている貝を見分ける最大のポイントはこの放射肋の数です。アカガイは42本から43本ありますが代用品とされるサルボウガイは30本から34本サトウガイは38本前後です。
殻の表面は本来黒褐色の殻皮(かくひ)と細かい毛に覆われていますが市場に並ぶ際はこれらが剥げ落ちて白くなっていることが多いです。
身は鮮やかな朱色をしており足(食べる部分)は肉厚で弾力があります。
アカガイの生態とライフサイクル
食性はプランクトン食性です。入水管から海水を取り込み中のプランクトンを濾し取って食べます。
水深5メートルから50メートル程度の内湾の泥底に潜って生活しています。ヘモグロビンのおかげで酸素不足に強いため青潮などが発生しても他の貝より長く生き延びることができますが極度の貧酸素状態が続くと死滅します。
産卵期は初夏から夏にかけてです。産卵すると身が痩せて味が落ちるためその前の冬から春にかけてが最も美味しい旬となります。
足を使って海底を移動することができ敵に襲われるとジャンプして逃げることもあります。
アカガイの分布と生息環境
北海道南部から九州朝鮮半島中国沿岸まで分布しています。
特に宮城県の仙台湾や仙南地域愛知県の三河湾瀬戸内海有明海などが有名な産地です。かつては東京湾(江戸前)でも大量に獲れましたが埋め立てや環境変化により激減しました。
波の静かな内湾の軟らかい泥質の海底を好みます。
アカガイの漁法
主に底引き網漁や桁網(けたあみ)漁で漁獲されます。
桁網漁は海底の泥ごと貝を掘り起こして網に入れる漁法です。潮干狩りで獲れることも稀にありますが通常は人が入れない水深に生息しているため一般の人が手に入れるのは難しいです。
国産の天然物は非常に高価であるため中国や韓国からの輸入物も多く流通しています。また一部では養殖も行われています。
アカガイの料理
独特の鉄分を含んだ香りと甘みそしてコリコリとした食感は他の貝にはない魅力です。
刺身・握り寿司
アカガイの美味しさを最大限に引き出す食べ方です。
殻から身を外し内臓を取り除いて塩で揉みヌメリと汚れを落とします。その後まな板に叩きつけると身がキュッと締まり食感が増します。
寿司屋では蝶々のように開いて飾り包丁を入れます。見た目が美しくなるだけでなく醤油の乗りが良くなり歯切れも良くなります。食べた瞬間に広がる磯の香りと濃厚な旨味は絶品です。
ヒモきゅう・酢の物
身だけでなくヒモ(外套膜)も非常に美味です。
丁寧に汚れを落としたヒモはシコシコとした食感がありキュウリと一緒に巻いたヒモきゅうや酢の物にすると酒の肴に最高です。
煮付け・炊き込みご飯
生食が主流ですが火を通しても美味しいです。
甘辛く煮付けると赤色がより鮮やかになりご飯のおかずにぴったりです。ただし加熱しすぎると硬くなるためさっと煮るのがコツです。
まとめ
アカガイは赤い血を持つという特異な進化を遂げた貝でありその赤色が食欲をそそる高級食材です。本物のアカガイ(本玉)と缶詰のサルボウガイは別物ですがそれぞれに良さがあります。もし寿司屋のカウンターで本玉に出会う機会があればその香り高さと歯ごたえをじっくりと味わってみてください。
アカガイに関するよくある質問
なぜ血が赤いのですか?
人間と同じく血液中にヘモグロビンという色素タンパク質を含んでいるからです。ヘモグロビンは鉄分を含んでおり酸素と結びつくと赤くなります。これにより酸素の少ない泥の中でも効率よく酸素を取り込んで呼吸することができます。
缶詰の赤貝とは違うのですか?
スーパーなどで売られている味付け赤貝の缶詰の原材料を見るとサルボウガイと書かれていることが多いです。サルボウガイはアカガイと同じフネガイ科ですが小型で放射肋の数が少なく価格も安価です。味は似ていますが本物のアカガイの方が大きさ香り食感ともに優れています。
旬はいつですか?
一般的に冬から春(1月から4月頃)が旬とされています。この時期は産卵に向けて栄養を蓄えているため身が太って甘みが増します。夏場は産卵後で身が痩せて味が落ちるだけでなく中毒のリスクも高まるため生食は避ける傾向があります。































