ナンヨウブダイ

沖縄の鮮やかな海を象徴するようなエメラルドグリーンの魚体を持つナンヨウブダイ。ダイビングやシュノーケリングでその美しい姿を目にしたことがある人も多いでしょう。沖縄の方言ではイラブチャーと呼ばれ市場では青い魚の代表格として並べられています。オウムのくちばしのような独特の歯でサンゴについた藻類を削り取るようにして食べるこの魚は美しいだけでなく食べても美味しい白身魚です。性転換をして色が変わる不思議な生態や沖縄県民に愛される理由について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | スズキ目ブダイ科アオブダイ属 |
| 標準和名 | ナンヨウブダイ |
| 漢字 | 南洋舞鯛 |
| 別名 | イラブチャー(沖縄)、トトン(奄美) |
| 学名 | Scarus ghobban |
| 英名 | Blue-barred parrotfish |
| 季節 | 通年(夏が旬とされることが多い) |
| 生息域 | 相模湾以南、インド・太平洋域 |
ナンヨウブダイとは
ナンヨウブダイはインド洋から太平洋にかけての暖かい海に広く分布するブダイ科の魚です。
日本では主に和歌山県以南で見られ特に沖縄県ではイラブチャーという名前で親しまれています。
ただしイラブチャーという言葉はブダイ類の総称でありアオブダイやヒブダイなども含まれますが市場で最もよく見かけイラブチャーの代名詞となっているのがこのナンヨウブダイです。
英名でパロットフィッシュ(オウム魚)と呼ばれる通りオウムのくちばしのように癒合した強靭な歯を持っています。
昼行性で夜になると岩陰で眠る習性がありその際に口から粘液を出して自分を包む透明な寝袋を作ることでも知られています。
ナンヨウブダイの特徴
体長は50センチメートルから大きいものでは80センチメートルほどになります。
最大の特徴は成長段階や性別によって劇的に変化する体色です。
メスは黄色味を帯びた褐色や薄い青色をしており体側に青い縦縞が入ります。
オスに性転換すると体色は鮮やかな青緑色や青紫色になり顔の周りには不規則なピンク色の模様が現れます。
ウロコは非常に大きく硬いため調理の際は専用のウロコ取りが必要なほどです。
歯は上下の顎が融合して板状になっておりこれで岩やサンゴの表面についた藻類を削り取って食べます。
ナンヨウブダイの生態とライフサイクル
食性は植物食性が強い雑食性です。岩や死んだサンゴに付着した藻類を好んで食べますがその際にサンゴの石灰質も一緒に齧り取ります。
消化されなかった石灰質は細かい砂として排泄されるためナンヨウブダイは美しい白砂のビーチを作る立役者の一人とも言われています。
サンゴ礁や岩礁帯の浅い場所を単独または小さな群れで回遊しています。
ブダイ科の魚の大きな特徴である雌性先熟の性転換を行います。
最初はメスとして成熟し産卵に参加しますが群れの中のオスがいなくなると大型のメスがオスへと性転換しハーレムを作ります。
このため大型の個体はほとんどが派手な体色のオスです。
ナンヨウブダイの分布と生息環境
日本では相模湾以南の太平洋側や琉球列島小笠原諸島などに分布しています。
海外では紅海を含むインド洋から太平洋の熱帯亜熱帯域に広く生息しています。
水深数メートルから20メートル程度の浅いサンゴ礁域や岩礁帯を好み防波堤の際などで見かけることもあります。
本州の沿岸でも夏から秋にかけて幼魚や若魚が見られることがあり海水温の上昇とともに生息域が北上している傾向にあります。
ナンヨウブダイの釣り方
沖縄では人気のターゲットであり強烈な引きを楽しむことができます。
フカセ釣り
オキアミや練り餌を使ったフカセ釣りが一般的です。
歯が鋭くハリスを噛み切られることが多いためワイヤーを使ったり針の軸が長いものを使ったりする工夫が必要です。
引きは非常にトルクフルで根に潜ろうとする力が強いため強引なやり取りが求められます。
ブダイ釣り(カニ餌)
本州などではカニを餌にした独特の釣り方で狙うこともあります。
岩場の溝や海藻の周りに仕掛けを落とし込みます。
ナンヨウブダイの料理
沖縄料理には欠かせない食材です。白身で水分が多いため刺身にする際は一工夫するとより美味しくなります。
刺身・湯引き
皮と身の間に旨味があるため皮を引かずに湯引きにするのが最高の食べ方です。
熱湯をかけた皮は柔らかくなりコリコリとした食感を楽しめます。
身は淡白ですが甘みがあり酢味噌やシークヮーサー醤油で食べると南国の味がします。
沖縄のスーパーでは皮付きのまま刺身として売られているのが一般的です。
マース煮
沖縄の伝統的な煮魚料理です。
塩(マース)と泡盛水だけでシンプルに煮込みます。
ナンヨウブダイの上品な出汁がスープに溶け出しふっくらとした身の甘さを引き立てます。
汁物(魚汁)
アラから良い出汁が出るため味噌汁やお吸い物に最適です。
ぶつ切りにした身と豆腐野菜を入れて味噌で味付けした魚汁(さかなじる)は沖縄の定食屋の定番メニューです。
フライ・唐揚げ
水分が多いため加熱して水分を飛ばすフライや唐揚げもよく合います。
外はサクサク中はフワフワの食感になり子供にも人気です。
まとめ
ナンヨウブダイはその派手な見た目から敬遠されることもありますが南国の海が育んだ極上の白身魚です。サンゴ礁を守り白い砂浜を作るという生態系における重要な役割も担っています。沖縄を訪れた際はぜひ市場でその鮮やかな青い姿を探し居酒屋で刺身やマース煮を味わってみてください。目と舌で南国の豊かさを感じることができるはずです。
ナンヨウブダイに関するよくある質問
毒はありますか
ナンヨウブダイ自体には毒はありませんが南方の海域に生息する個体は食物連鎖によってシガテラ毒を体内に蓄積している可能性があります。
シガテラ毒は大型の個体ほどリスクが高まるため過度に大きな個体を食べる際は注意が必要です。また近縁のアオブダイは内臓に猛毒のパリトキシンを持つことがあり死亡事故も起きているためブダイ類の内臓は食べないようにするのが賢明です。
アオブダイとの違いは
標準和名のアオブダイは本州沿岸に多く生息し全体的に青黒い色をしており尾ビレの両端が長く伸びるのが特徴です。
一方ナンヨウブダイはより鮮やかな青緑色や黄色が混ざり体側に不規則な模様や帯があります。市場でイラブチャーとして売られているのは主にナンヨウブダイやヒブダイでありアオブダイとは区別されます。
イラブチャーとはどういう意味ですか
沖縄の方言でブダイ類全般を指す言葉です。
イラは鎌(カマ)や美しいという意味がありブチャーは斑点や病気などを指す言葉が変化したものという説や体が膨らむ様子を表したという説など諸説あります。一般的には美しい色の魚という意味合いで使われています。青いものを青イラブチャー、赤いもの(ヒブダイなど)を赤イラブチャーと呼び分けたりします。































