アカテガニ

夏休みの自由研究や磯遊びの定番として親しまれているアカテガニ。その名の通り鮮やかな赤いハサミを持ち甲羅には笑顔のような模様が刻まれている愛嬌たっぷりのカニです。カニでありながら水に浸かることを嫌い生涯のほとんどを陸上の森や石垣で過ごすという変わった生態を持っています。夏の大潮の夜にメスが一斉に海へ降りて幼生を放つ光景は生命の神秘を感じさせる夏の風物詩としても知られています。海辺の森の掃除屋として生態系を支えるこのカニの特徴やベンケイガニとの見分け方そして飼育する際のポイントについて解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 十脚目ベンケイガニ科アカテガニ属 |
| 標準和名 | アカテガニ |
| 漢字 | 赤手蟹 |
| 別名 | ヤマガニ、テガニ |
| 学名 | Chiromantes haematocheir |
| 英名 | Red-clawed crab |
| 季節 | 春から秋(冬は冬眠) |
| 生息域 | 本州から沖縄の海岸周辺の森林、石垣、土手 |
アカテガニとは
アカテガニは日本をはじめとする東アジアの海岸周辺に生息するベンケイガニ科のカニです。名前にカニと付いていますが海中ではなく海岸近くの湿った森林や土手あるいは民家の石垣の隙間などを住処とする陸棲のカニです。エラ呼吸を行いますがエラの中に少量の水を蓄えてそれを循環させることで陸上での呼吸を可能にしています。そのため乾燥には比較的強いですが定期的に水を補給する必要があります。雑食性で落ち葉や昆虫小動物の死骸など何でも食べる森の掃除屋としての役割を担っています。
アカテガニの特徴
甲幅は3センチメートル前後で四角い形をした甲羅は表面が滑らかで光沢があります。最大の特徴は名前の由来でもある赤いハサミです。特に成熟したオスはハサミが大きく鮮やかな赤色になり迫力があります。また甲羅の真ん中あたりにニコちゃんマークのような窪みがあり笑顔のように見えるのがチャームポイントです。体色は個体差がありますが一般的に緑褐色や黄褐色をしておりハサミの赤色とのコントラストが美しいです。性格は比較的温厚で人間が近づくと素早く岩陰や巣穴に逃げ込みます。
ベンケイガニとの見分け方
同じような環境に生息するカニにベンケイガニやクロベンケイガニがいますがこれらは見た目の質感で見分けることができます。アカテガニの甲羅はツルツルとしていて丸みを帯びておりスマイルマークのような窪みがあります。一方でベンケイガニの甲羅はゴツゴツとしていて角張っており全体的に赤みが強いのが特徴です。またクロベンケイガニはハサミを含めて全身が暗い色をしており甲羅の縁に切れ込みがたくさんあります。ハサミの質感もアカテガニは滑らかですがベンケイガニは顆粒状の突起がありザラザラしています。
陸上生活と放幼
普段は森の中で生活しているアカテガニですが繁殖には海が必要です。夏の大潮の夜満潮の時刻に合わせてお腹に卵を抱えたメスたちが一斉に海岸へと大移動を開始します。これを放幼あるいはゾエア放出と呼びます。波打ち際に辿り着いたメスは体を細かく震わせてお腹の卵から孵化した幼生(ゾエア)を海中へと解き放ちます。無数の幼生が海へと旅立つこの神秘的な行動は多くのアカテガニ観察会などで人気のイベントとなっています。海で育った幼生は数ヶ月後に稚ガニとなって再び陸へと上がり森を目指します。
アカテガニの飼育
アカテガニは非常に丈夫で飼育しやすいカニでありペットとしても人気があります。水槽に砂や土を敷き体が隠れる流木や石を配置します。陸棲ですが水飲み場と湿気が必要なため深めの水入れを設置するか定期的に霧吹きをして湿度を保つことが重要です。エサは雑食性なのでカニ用の人工飼料やザリガニのエサのほかご飯粒やパン野菜クズ煮干しなど何でもよく食べます。脱走の名人なので水槽のフタは重しを乗せるなどしてしっかりと閉める必要があります。
アカテガニの料理
一般的には食用とされませんがカニ特有の良い出汁が出るため地域によっては味噌汁や唐揚げにして食べることがあります。
味噌汁
よく洗ったアカテガニを半分に割り水から煮出します。体が小さいため身を食べるのは困難ですが殻から濃厚なカニの風味が出て美味しい出汁になります。磯の香りが強く野趣あふれる味わいです。
唐揚げ・素揚げ
殻が柔らかい脱皮直後の個体や小さな個体であれば高温で揚げることで丸ごと食べられます。サクサクとした食感と香ばしさがありカルシウムも摂取できます。
注意点としてアカテガニを含む淡水や汽水域のカニにはウェステルマン肺吸虫という寄生虫がいる可能性があります。調理する際は中心部までしっかりと火を通す必要があり生食や加熱不十分な状態で食べることは大変危険です。基本的には食べるよりも観察して楽しむ生き物と言えます。
まとめ
アカテガニは海と陸を繋ぐ架け橋のような存在です。森の中でカニに出会うという不思議な体験をさせてくれる彼らは自然の豊かさのバロメーターでもあります。赤いハサミと甲羅の笑顔を探して夏の夜の海岸や近くの森を散策してみてはいかがでしょうか。飼育もしやすいため小さな家族として迎えるのもおすすめです。
アカテガニに関するよくある質問
水の中に入れなくても大丈夫ですか
大丈夫ですが乾燥は厳禁です。完全に水没させる必要はありませんがエラを湿らせるための水飲み場は必須です。逆に深い水の中に長時間沈めると溺れて死んでしまうことがあります。陸地をメインにして全身が浸かれる程度の水入れを用意するのが理想的な環境です。
ハサミで挟まれたら痛いですか
オスの大きなハサミに挟まれるとそれなりに痛く出血することもあります。捕まえる際は背中側から甲羅の両端を親指と人差指で挟むように持つと安全です。もし挟まれてしまった場合は無理に引っ張るとハサミが取れて筋肉が食い込むため地面に手を置くなどしてカニを落ち着かせると離してくれることが多いです。
冬の間はどうしていますか
気温が下がる冬の間は土の中や岩の隙間深くで冬眠します。飼育している場合も室温が下がると動きが鈍くなりエサを食べなくなります。冬眠させる場合は乾燥しないように注意し春になるまでそっとしておきます。暖かい室内で飼育する場合は冬眠せずに活動し続けることもあります。































