イセエビ

長い髭と赤い甲冑をまとった姿で海の武士とも称されるイセエビ。結婚式や正月などのお祝いの席には欠かせない縁起物として古くから日本人に愛されてきました。そのプリプリとした食感と濃厚な甘みはまさにエビの王様と呼ぶにふさわしい味わいです。高級食材として知られていますが実は日本各地の磯に生息しており夜釣りで狙うこともできる身近なターゲットでもあります。長寿の象徴とされるこのエビの生態や列をなして海底を歩く不思議な習性そして余すところなく味わい尽くすための料理法について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 十脚目イセエビ科イセエビ属 |
| 標準和名 | イセエビ |
| 漢字 | 伊勢海老 |
| 別名 | 鎌倉海老、志摩海老、具足海老 |
| 学名 | Panulirus japonicus |
| 英名 | Japanese spiny lobster |
| 季節 | 秋から冬 |
| 生息域 | 茨城県以南の太平洋岸、九州、台湾 |
イセエビとは
イセエビは日本の房総半島以南から台湾にかけての太平洋沿岸に分布する大型のエビです。名前の由来は伊勢地方で多く獲れたからという説や磯にいるエビという意味のイソエビが転じたという説また威勢がいいエビだからという説などがあります。ザリガニやロブスターのように大きなハサミは持っておらず代わりに非常に長く発達した第二触角を持っています。夜行性で昼間は岩穴や岩陰に潜んでいますが夜になると穴から出てきて活発に餌を探します。日本では重要な水産資源として漁業権が設定されている場所がほとんどであり勝手に捕獲することは密漁として厳しく処罰されるため注意が必要です。
イセエビの特徴
成体は体長30センチメートルほどになり重さは1キログラムを超えることもあります。体色は暗赤色や赤褐色をしており茹でると鮮やかな赤色に変化します。頭胸部には多数の鋭い棘があり素手で掴むと怪我をするほどです。最大の特徴である長い触角は周囲の様子を探るセンサーの役割を果たすだけでなく外敵に対する武器としても使われます。また触角の付け根にある発音器を擦り合わせることでギイギイという威嚇音を出すことができます。これを水中で聞くと意外なほど大きな音に聞こえます。
謎多き生態と行進
イセエビの生活史にはまだ解明されていない部分も多くあります。卵から孵化した幼生はフィロソーマと呼ばれガラス細工のように平たく透明な姿をしています。このフィロソーマ幼生は長期間にわたり海流に乗って外洋を漂いながら成長し脱皮を繰り返してプエルルス幼生(ガラスエビ)へと変態してから沿岸の岩場に定着します。この浮遊期間が約1年と非常に長いため養殖(完全養殖)を難しくしている要因の一つとなっています。また繁殖期などに海底で一列に並んで移動する習性があることが知られています。これは前の個体の尾に後ろの個体が触角を触れさせて連なるもので敵から身を守るためや水の抵抗を減らすためと考えられていますが正確な理由は分かっていません。
イセエビの釣り
漁業権の設定されていないエリアや遊漁が認められている特定の場所ではイセエビ釣りが楽しめます。テトラポッドの隙間や堤防の壁際を狙う穴釣りが一般的です。
仕掛けと釣り方
専用の短い竿にイセエビ用の仕掛け(複数の針がついたもの)をセットしエサにはイカの切り身やキビナゴなどを使います。夜行性なので日没後からが本番です。イセエビがエサを抱え込むと竿先に独特の重みや微妙なアタリが出ます。針掛かりしたら岩に張り付かれないように一定のテンションで巻き上げることが重要です。釣り上げた際にギイギイと鳴く音を聞くのは釣り人冥利に尽きる瞬間です。
イセエビの料理
刺身にすれば甘く焼けば香ばしく煮れば良い出汁が出るという死角のない食材です。頭や殻からも濃厚な旨味が出るため捨てるところがありません。
刺身・活き造り
新鮮なイセエビの醍醐味はやはり刺身です。透き通った身は弾力があり噛みしめると口いっぱいに甘みが広がります。氷水で締めると更に身が締まり食感が増します。
残酷焼き・鬼殻焼き
生きたままのイセエビを網に乗せて直火で焼く豪快な料理です。焼けるにつれて殻が赤くなり香ばしい香りが漂います。身はふっくらとして味が凝縮されミソと一緒に食べると濃厚な味わいを楽しめます。
具足煮
半分に割ったイセエビを酒や醤油みりんで煮付けた料理です。殻を甲冑(具足)に見立ててこう呼ばれます。煮汁に溶け出したエビの旨味が身に戻りご飯にもお酒にも合う伝統的な味です。
味噌汁
頭や殻を使った味噌汁はイセエビ料理の締めくくりに欠かせません。割った頭を水から煮出すだけで黄金色の出汁が出ます。濃厚なエビの風味とミソのコクが溶け合った汁は五臓六腑に染み渡る美味しさです。
まとめ
イセエビはその立派な姿と味で日本の食文化を彩ってきた特別な存在です。長い幼生期間を経て故郷の磯に戻ってくる旅路や海底を行進する姿など知れば知るほど興味深い生態を持っています。お祝いの席で出される赤いエビには長い年月を生き抜いてきた海のドラマが詰まっています。その命に感謝しつつ頭の先から尻尾まで余すことなく味わってください。
イセエビに関するよくある質問
ロブスターとの違いは何ですか
イセエビとロブスター(オマール海老)の最大の違いは大きなハサミの有無です。イセエビには大きなハサミはありませんがロブスターにはザリガニのような巨大なハサミがあります。また分類上もイセエビはイセエビ科でロブスターはアカザエビ科(ザリガニの仲間)と異なります。味はイセエビの方が甘みが強くロブスターは身が締まっていて弾力が強い傾向があります。
旬はいつですか
一般的に漁が解禁される秋から冬にかけてが旬です。多くの地域では産卵期の夏場(5月から8月頃)を禁漁期間として資源保護を行っています。秋に解禁されると身が詰まった美味しいイセエビが出回ります。
勝手に獲ってもいいのですか
イセエビはほとんどの沿岸域で第一種共同漁業権の対象となっており漁業組合員以外の採捕が禁止されています。これに違反すると密漁となり高額な罰金や懲役刑が科される可能性があります。釣りをする際は必ずその場所が漁業権の設定エリア外であるかあるいは遊漁規則で許可されているかを確認してください。知らなかったでは済まされない重い罪になることがあります。































