イイダコ

その名の通り頭(胴部)にぎっしりと詰まった卵がまるで炊きたての御飯のように見えることから名付けられたイイダコ。タコ類の中では最も小型の部類に入り丸ごと一口で食べられる手軽さと可愛らしい見た目で古くから庶民の味として親しまれています。冬から春にかけての産卵期には子持ちのメスが珍重されそのモチモチとした食感と濃厚な旨味は季節の風物詩となっています。白いものに抱きつく習性を利用したユニークな釣り方も人気があるこの小さなタコの生態と美味しく食べるためのコツについて解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 八腕形目マダコ科イイダコ属 |
| 標準和名 | イイダコ |
| 漢字 | 飯蛸 |
| 別名 | コモチダコ、カイダコ |
| 学名 | Amphioctopus fangsiao |
| 英名 | Webfoot octopus / Ocellated octopus |
| 季節 | 冬から春(12月から4月頃) |
| 生息域 | 北海道以南の日本各地、朝鮮半島、中国 |
イイダコとは
イイダコは日本を含む東アジアの沿岸域に生息する小型のタコです。
名前の由来は産卵期を迎えたメスの胴部(頭のように見える部分)に詰まった卵の粒が大きさや色形ともに米飯(いい)にそっくりであることから飯蛸(イイダコ)と呼ばれています。
全長は最大でも30センチメートルほどにしかならずマダコやミズダコに比べて非常に小さいのが特徴です。
古くから瀬戸内海や有明海などで多く漁獲されており煮付けやおでんの具として日本の食卓に馴染み深い食材です。特に子持ちのイイダコは春を告げる味覚として人気があります。
イイダコの特徴
体長は10センチメートルから30センチメートル程度です。
体表はイボが少なく滑らかで興奮すると体色が変化しますが通常は褐色や灰色をしています。
マダコとの最大の見分け方は足の付け根にある紋様です。イイダコには両目の下(足の付け根付近)に金色のリング状の斑紋(眼状紋)が一つずつあります。また足の間の膜(傘膜)が広いことも特徴の一つです。
オスとメスでは吸盤の並び方が異なりオスは吸盤の大きさが不揃いで一部が大きくなっていますがメスは大きさが揃って綺麗に並んでいます。
イイダコの生態とライフサイクル
食性は肉食性で二枚貝や甲殻類を好んで食べます。特に二枚貝が大好物で貝の隙間に足を差し込んだり貝殻をこじ開けたりして中身を食べます。
白い色に強い興味を示す習性がありこれを利用してラッキョウや白い陶器などを餌に見立てて誘う漁法が発達しました。
寿命は約1年と短い年魚です。
産卵期は冬から春にかけてです。メスは二枚貝の空き殻や空き缶などを隠れ家にしてその内側に米粒のような卵を産み付け孵化するまで餌も取らずに守り続けます。孵化した子供は海中を漂った後に着底して成長し翌年の春に産卵して一生を終えます。
イイダコの分布と生息環境
北海道南部から九州沖縄まで日本各地の沿岸に分布しています。
内湾の波が穏やかな場所を好み水深数メートルから数十メートルの砂泥底に生息しています。
アマモ場や貝殻が堆積しているような場所を隠れ家として利用します。東京湾や瀬戸内海三河湾などが主要な産地として知られています。
イイダコの釣り方
イイダコ釣りは初心者や子供でも手軽に楽しめる人気のレジャーです。白いものに抱きつく習性を利用した独特の仕掛けを使います。
イイダコテンヤ釣り
伝統的な釣り方です。テンヤと呼ばれるオモリ付きの針に白いラッキョウや陶器製の白い疑似餌、あるいは脂身などを縛り付けて海底に落とします。
底をトントンと小突いて誘い重みを感じたら合わせます。本物の餌を使わないため手も汚れずゲーム感覚で楽しめます。
スッテ釣り(ルアーフィッシング)
近年主流になりつつある方法です。
イカ釣り用のスッテ(小型の疑似餌)やイイダコ専用のパール玉が付いたルアーを使います。キャストして底をズル引きしイイダコが乗ってくるのを待ちます。足元でも釣れるため堤防からのファミリーフィッシングに最適です。
イイダコの料理
身は柔らかく加熱しても硬くなりにくいため丸ごと食べる料理に向いています。墨袋を取る下処理さえすれば様々な料理で楽しめます。
煮付け(桜煮)
イイダコ料理の代表格です。
醤油、酒、みりん、砂糖で甘辛く煮付けます。煮ると足がくるんと丸まり桜の花のような色になることから桜煮とも呼ばれます。頭からガブリと噛み付くと中からモチモチとした卵(飯)が出てきて至福の味わいです。
おでん
おでんの具としても優秀です。
丸ごと串に刺して煮込みます。良い出汁が出ると同時に出汁を吸ってジューシーになります。一口サイズで食べやすく見た目も可愛らしいため子供にも人気があります。
唐揚げ
下味をつけて丸ごと揚げます。
外はカリッと中はプリプリとした食感を楽しめます。頭の卵もホクホクとして美味しいです。ビールのおつまみに最適です。
塩茹で・刺身
新鮮なものは塩茹でにして酢味噌やわさび醤油で食べたり活け締めにしたものを刺身(踊り食い)にしたりすることもあります。吸盤のコリコリとした食感がたまりません。
まとめ
イイダコはその名の通り御飯のような卵を持つ小さなタコです。短い寿命の中で子孫を残すために栄養を蓄えた冬から春のイイダコはまさに旬の味わいです。白いラッキョウで釣れるというユーモラスな習性も相まって釣り人や食通から愛され続けています。もしスーパーで小さなタコが並んでいたら足の付け根の金色の輪を確かめてみてください。それが美味しさの目印です。
イイダコに関するよくある質問
イイダコの「飯」とは何ですか
メスのイイダコが抱えている卵のことです。煮ると白く濁り粒々とした形状や食感が炊いたお米(飯)にそっくりであることからそう呼ばれます。この飯が入っているのは産卵期前のメスだけでありオスには入っていません(オスには白子があります)。
ヌメリ取りのコツは
タコ類特有のヌメリがあるため調理前には塩揉みが必要です。ボウルにイイダコと多めの塩を入れ手でしっかりと揉み込みます。泡が出てヌメリが取れてきたら流水で綺麗に洗い流します。これを2回ほど繰り返すとキュッとした手触りになり臭みも取れます。冷凍してから解凍するとヌメリが取りやすくなるという裏技もあります。
墨袋は取ったほうがいいですか
丸ごと煮る場合墨袋を破ってしまうと煮汁や他の具材が真っ黒になってしまうため基本的には取り除くことをおすすめします。胴部(頭)を裏返して内臓と墨袋を指でつまんで引き抜くか胴の隙間からピンセットなどで取り出すと綺麗に仕上がります。ただし墨自体は食べられるため気にならない場合はそのままでも問題ありません。































