セノテヅルモヅル

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まるでギリシャ神話に登場するメドゥーサの頭髪か、あるいは地球外からやってきたエイリアンのような衝撃的な姿を持つセノテヅルモヅル。一見すると植物の根や絡まった蔦(ツタ)のようですが、ヒトデやウニ、クモヒトデと同じ棘皮動物(きょくひどうぶつ)の仲間であり、れっきとした動物です。深海釣りの外道として釣り針やラインにぐちゃぐちゃに絡みついて上がってくることが多く、その奇怪な見た目と解くのが困難なほどの複雑さから、釣り人には「海の厄介者」として忌み嫌われています。しかし、勇気を出して食べてみると、意外にもウニやカニミソに似た濃厚な味わいを楽しめることはあまり知られていません。その奇妙な生態と名前の由来、釣り場での遭遇、そして未知の味について解説します。

項目内容
分類クモヒトデ綱(蛇尾綱)ツルクモヒトデ目テヅルモヅル科
標準和名セノテヅルモヅル
漢字瀬の(背の)手蔓藻蔓
別名モヅル、蜘蛛の巣
学名Gorgonocephalus eucnemis
英名Basket star / Northern basket star
季節通年(冬に卵を持つことが多い)
生息域北太平洋、日本海、オホーツク海の水深数十m〜数百m
目次

セノテヅルモヅルとは

セノテヅルモヅルは、北海道や東北地方、日本海側の冷たい海を好むテヅルモヅルの一種です。

分類上は「クモヒトデ」に近いグループに属しています。

海底の岩やサンゴなどにしがみつき、潮流に向かって腕を大きく広げ、流れてくるプランクトンを捕食して生活しています。

名前の「テヅルモヅル」は、「手蔓藻蔓」と書き、「手がツル(蔓)のようで、藻(海藻)のようでもある」という意味に由来しています。

「セノ」の部分は、盤(体の中央部分)の背中側がつるっとしていて、他の種にあるような突起や棘が少ない特徴(背の)から来ているとされます(諸説あり)。

驚異的な身体の特徴

この生き物の最大の特徴は、フラクタル図形のように無限に分岐していく「腕」です。

体の中央には「盤(ばん)」と呼ばれる五角形の円盤があり、そこから5本の腕が伸びています。

この腕は根元から二股に分かれ、その先でさらに二股に…と数十回以上も分岐を繰り返し、最終的には数千本もの細かい触手となります。

腕を全て広げると直径1メートル近くになることもありますが、危険を感じたり釣り上げられたりすると、腕を内側に巻き込んでソフトボール大の塊になります。

普段はベージュやピンクがかった色をしており、うごめく姿はまさに深海の怪物です。

釣り人にとっての「悪夢」

深海釣り、特に北日本のタラ釣りやメバル釣りにおいて、セノテヅルモヅルは招かれざる客です。

絡みつきの恐怖

仕掛けを回収している最中に、海中で漂っているセノテヅルモヅルの腕に針が掛かると、彼らは反射的に腕を巻き付けてきます。

釣り上げると、仕掛け全体が複雑な腕の塊に飲み込まれており、知恵の輪どころではない惨状になります。

無理に外そうとすると腕がポロポロと折れてしまい(自切という習性)、細かい破片が船上に散らばるため、釣り人泣かせの存在です。

対処法

掛かってしまったら、諦めて仕掛けを切るか、根気よく解くしかありません。

腕は再生するため、海に帰せばまた元通りになりますが、船上ではただの厄介なゴミとして扱われることがほとんどです。

意外な食材としての評価

「ゲテモノ食い」のジャンルになりますが、実は食べることができます。

食べる部位は、腕ではなく、中央の「盤」の中にある生殖巣(卵巣や精巣)です。

見た目はグロテスクですが、毒はありません。

味は「殻付きのウニ」や「カニミソ」に近く、濃厚な旨味と磯の香りがあります。

特に産卵期を迎えた個体は中身が詰まっており、知る人ぞ知る珍味として楽しまれています。

腕の部分も唐揚げなどで食べられますが、骨(石灰質の殻)が多く、ポリポリとした食感を楽しむ程度です。

セノテヅルモヅルの料理

持ち帰る際は、他の魚と混ぜないようにビニール袋に入れて隔離するのが鉄則です。

塩茹で

最も基本的で簡単な食べ方です。

よく洗って泥や汚れを落とし、沸騰した塩水に丸ごと投入します。

茹でると赤く変色し、少し美味しそうな見た目になります。

茹で上がったら、盤(中央部分)をハサミで切り開き、中に入っているオレンジ色や黄色のドロっとした中身(生殖巣)をスプーンですくって食べます。

醤油を少し垂らすと、ウニのような風味が引き立ちます。

味噌汁

良い出汁が出るため、味噌汁の具にすることもできます。

ぶつ切りにして鍋に入れ、煮込みます。

磯の香りが強い濃厚な味噌汁になりますが、見た目のインパクトが強烈なので、食欲が湧くかどうかは個人差があります。

珍味・軍艦巻き

取り出した生殖巣を集めて、軍艦巻き(寿司)にすると、見た目は完全にウニの軍艦巻きです。

味もウニに似ていますが、少し独特のエグみや苦味がある場合もあるため、大人の味と言えます。

まとめ

セノテヅルモヅルは、そのエイリアンのような姿で人々を驚かせ、釣り人を困らせる深海の住人です。しかし、その正体は複雑に進化したヒトデの親戚であり、殻の中にはウニにも似た濃厚な味を隠し持っています。もし深海釣りで仕掛けに絡みついたこの塊が上がってきたら、ただ捨てるのではなく、話のネタに一度持ち帰ってその未知なる味を確かめてみてはいかがでしょうか。もちろん、解くのが大変な仕掛けの恨みを晴らす意味も込めて。

セノテヅルモヅルに関するよくある質問

毒はありますか

毒はありません。

見た目が派手で触手があるため、クラゲのような刺胞毒を心配する人がいますが、触っても刺されることはありません。

ただし、腕の表面はザラザラしており、服や皮膚に引っかかりやすいので注意してください。

飼育はできますか

非常に難しいです。

深海性であり、低水温(10度以下)を維持する必要があること、生きたプランクトンを大量に捕食すること、そしてデリケートで腕が切れやすいことから、一般家庭での長期飼育は困難を極めます。

水族館でも飼育展示には高い技術が必要です。

植物ですか、動物ですか

動物です。

「モヅル(藻蔓)」という名前や、植物の根のような見た目から海藻の仲間と間違われやすいですが、ウニやヒトデと同じ棘皮動物(きょくひどうぶつ)に属する動物です。

自ら動いて場所を変えたり、腕を使って獲物を捕まえたりします。

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この記事を書いた人

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