スルメイカ

日本の食卓で最も馴染み深いイカであり、「イカの王様」と言えば漁獲量からしてもこのスルメイカを指すことが多いでしょう。刺身、塩辛、イカ焼き、そして乾燥させたスルメ(あたりめ)と、その利用法は無限大です。寿命わずか1年という儚い命を燃やし、日本列島を回遊して成長するこのイカは、夜の海に漁火(いさりび)を灯す日本の原風景の一部でもあります。近年は大人気の「イカメタル」ゲームのターゲットとして、また資源減少が懸念される貴重な水産資源として注目されるスルメイカについて解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | ツツイカ目アカイカ科スルメイカ属 |
| 標準和名 | スルメイカ |
| 漢字 | 鯣烏賊 |
| 別名 | マイカ(真烏賊)、マツイカ、バライカ(小型)、ムギイカ(若魚) |
| 学名 | Todarodes pacificus |
| 英名 | Japanese flying squid |
| 季節 | 通年(群れによって旬が異なるが、夏〜秋が多い) |
| 生息域 | 日本近海、東シナ海、オホーツク海 |
スルメイカとは
スルメイカは、日本列島を取り囲むように生息するアカイカ科の頭足類です。
古くから保存食「スルメ」に加工されてきたことから、そのままスルメイカという標準和名が付けられました。しかし、釣り人や鮮魚店の間では、最も一般的なイカという意味で「マイカ(真烏賊)」と呼ばれることが多く、ケンサキイカをマイカと呼ぶ地域と混同されやすいため注意が必要です。
内臓(肝臓)が非常に大きく発達しており、これを使った「塩辛」を作ることができるのが、ヤリイカやアオリイカにはない最大の特徴です。
スルメイカの特徴
体色は赤褐色から茶褐色で、興奮すると色が濃くなります。背中の中心には黒い縦線が走っています。
エンペラ(ヒレ)は菱形をしており、ヤリイカやケンサキイカよりも短く、頭部の頂点に位置しています。
最大の特徴は「眼」です。スルメイカは眼球が露出している「開眼目(かいがんもく)」に分類され、まぶた(眼膜)がありません(ヤリイカなどは眼膜がある閉眼目)。
10本の足のうち、2本の触腕は特に長く、獲物を捕らえる際に瞬時に伸ばします。
スルメイカの生態とライフサイクル
寿命と回遊
スルメイカの寿命は約1年です。生まれた時期によって「冬生まれ群」「秋生まれ群」「夏生まれ群」の3つに大きく分けられます。
彼らは東シナ海などで生まれ、黒潮に乗って北上し、北海道やオホーツク海などの餌が豊富な海域で成長します。そして成熟すると、産卵のために再び南の海へと戻り、産卵を終えると一生を終えます。この大回遊を行うため、日本各地でそれぞれの群れを釣ることができます。
食性
非常に貪欲な肉食性です。オキアミなどのプランクトンから、イワシやハダカイワシなどの小魚、時には共食いまでするほどの食欲で急速に成長します。
飛翔能力
英名で “Flying squid” と呼ばれる通り、天敵(マグロやイルカなど)に追われると、水をジェット噴射して海面から飛び出し、エンペラと腕を翼のように広げて数十メートルも滑空することがあります。
スルメイカの分布と生息環境
東シナ海から日本海、オホーツク海、太平洋側まで広く分布しています。
主に沖合の水深30メートルから200メートル付近の中層から深場を回遊しています。夜間は餌を追って浅い場所に浮上してくるため、夜釣りの好ターゲットとなります。
スルメイカの釣り方
古くからの漁法であるイカ釣り漁船(集魚灯を使う漁)に加え、近年はルアー感覚で楽しむボートフィッシングが爆発的な人気を博しています。
イカメタル
鉛スッテ(オモリと針が一体化したルアー)を使い、ライトタックルで狙う釣り方です。
カウンター付きのベイトリールを使い、船長の指示ダナ(深さ)に合わせて仕掛けを落とします。ロッドを優しくしゃくって誘い、止めた瞬間の「フッ」と軽くなるアタリや、竿先がわずかに入り込む繊細なアタリを掛けていきます。ゲーム性が非常に高く、中毒になる釣り人が続出しています。
オモリグ
潮が速い時や、大型を狙う時に使われる仕掛けです。重い中オモリを付け、その先にエギ(餌木)を漂わせます。ハリス(リーダー)がある分、エギが自然に動くため、警戒心の強い大型スルメイカに有効です。
ブランコ仕掛け(電動直結)
昔ながらの胴突き仕掛けです。5本〜10本のツノ(プラヅノ)を付け、電動リールで多点掛けを狙います。群れが濃い時は一度に何杯も釣れ、ズッシリとした重量感を味わえます。
スルメイカ釣りに必要な道具
イカメタルを基準にしたタックル例です。
タックル
- ロッド: イカメタル専用ロッド(6ft〜7ft)。竿先(ティップ)の色が変わっており、目感度でアタリが取れるものが必須です。
- リール: カウンター付き小型ベイトリール。0.4号〜0.6号のPEラインを200m以上巻きます。
- ルアー: 鉛スッテ(15号〜30号)と、枝針に付ける浮きスッテ(ドロッパー)。赤緑や赤白カラーが定番です。
スルメイカの料理
身の甘み、歯ごたえ、そして何より肝の旨味がスルメイカの真骨頂です。
イカ刺し・イカソーメン
新鮮なスルメイカは透明で、コリコリとした食感があります。甘みがあり、生姜醤油とよく合います。細く切って麺のようにすするイカソーメンは、北海道函館などの名物です。
肝醤油・ルイベ
スルメイカの肝(ワタ)は大きくて濃厚です。新鮮な肝を醤油に溶いた「肝醤油」で食べる刺身は、他のイカでは味わえない濃厚なコクがあります。また、身で肝を巻いて凍らせた「ルイベ」は、口の中でトロリと溶ける絶品の珍味です。
塩辛
スルメイカといえば塩辛です。新鮮な肝と身を塩で漬け込み、発酵させることで旨味成分(アミノ酸)が爆発的に増えます。家庭で作る作りたての塩辛は、市販品とは別次元の美味しさです。
一夜干し・天ぷら
干すことで旨味が凝縮されます。軽く炙ってマヨネーズと七味唐辛子をつければ、最高の酒の肴になります。水分が抜けて味が濃くなるため、天ぷらにしても油跳ねが少なく美味しく揚がります。
まとめ
スルメイカは、わずか1年の命の中で、日本中の海を旅し、私たちの食文化を支えてくれています。夜の海に煌々と輝く漁火は、スルメイカ漁の光景であり、日本の風物詩です。イカメタルで繊細なアタリを捉えて釣り上げた一杯は、刺身はもちろん、肝まで余すことなく味わい尽くしてください。ただし、アニサキスには十分な注意が必要です。
スルメイカに関するよくある質問
アニサキスはいますか?
はい、スルメイカはアニサキスの寄生率が非常に高い魚介類です。生食する場合は、隠し包丁を細かく入れる、マイナス20度で24時間以上冷凍する、あるいは目視で徹底的に除去するなどの対策が必須です。特に肝を生で食べる際は冷凍処理を強く推奨します。
ケンサキイカやヤリイカとの違いは?
- スルメイカ: エンペラが菱形で短い。眼に膜がない。肝が大きい。身は少し硬めで旨味が強い。
- ヤリイカ/ケンサキイカ: エンペラが槍のように長い。眼に膜がある。肝は小さい。身は柔らかく甘みが強い。
「ムギイカ」とは何ですか?
春から初夏にかけて釣れる、胴長20cm以下の若くて小さなスルメイカのことです。麦の収穫時期に獲れることからこう呼ばれます。身が非常に柔らかく、皮も気にならないため、丸ごと煮付けなどにすると大変美味です。































