シャコガイ

南国の透き通った海でサンゴ礁に埋もれるようにして口を開き鮮やかなコバルトブルーやグリーンの外套膜を波に揺らめかせているシャコガイ。世界最大の二枚貝として知られその大きさは最大で1メートルを超え重さは200キログラムにも達します。かつてはダイバーの足を挟んで溺れさせる人食い貝という恐ろしい伝説が語られましたが実際は光合成を行う平和な生き物です。沖縄県では高級食材として親しまれておりその巨大な貝柱と独特の食感を持つヒモ(外套膜)は一度食べれば忘れられない磯の風味と甘みを持っています。美しいサンゴ礁の守り神の生態と知られざる味わいについて解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | ザルガイ目ザルガイ科シャコガイ亜科 |
| 標準和名 | オオシャコガイ(総称としてシャコガイ) |
| 漢字 | 硨磲貝 |
| 別名 | ギーラ、アジケー(沖縄) |
| 学名 | Tridacna gigas |
| 英名 | Giant clam |
| 季節 | 夏(通年漁獲される) |
| 生息域 | 奄美群島以南のサンゴ礁域 |
シャコガイとは
シャコガイは太平洋やインド洋の熱帯・亜熱帯海域に生息する世界最大の二枚貝のグループです。
日本で見られる主な種類にはヒメシャコガイやヒレシャコガイ、ゴウシュウシャコガイなどがありこれらを総称してシャコガイと呼びます。
漢字の「硨磲(しゃこ)」は貝殻の表面にある放射状の溝が牛車が通った後に残る車輪の跡(轍)に似ていることに由来すると言われています。また仏教では七宝の一つに数えられるほどその貝殻は美しく貴重なものとされてきました。
沖縄県ではギーラと呼ばれ刺身や和え物として古くから愛されていますが乱獲や環境変化により個体数が減少しておりワシントン条約によって国際的な取引が厳しく規制されています。
シャコガイの特徴
最大種であるオオシャコガイは殻長1メートルを超えますが日本近海で見られるヒメシャコガイなどは10センチメートルから30センチメートル程度のものが多いです。
貝殻は非常に厚く波打つような扇形をしており縁はギザギザと噛み合うようになっています。
最大の特徴は殻の間から溢れ出るように広がる外套膜(がいとうまく)です。この膜は青や緑、紫、褐色など個体によって様々な色や模様をしており非常に美しいです。この色は構造色によるものであり光の当たり方によって輝きが変わります。
殻を閉じる力は強力ですが映画などで描かれるように瞬時に閉じるわけではなくゆっくりと断続的に閉じることが多いです。
シャコガイの生態とライフサイクル
食性は非常にユニークで自給自足を行っています。
外套膜の組織の中に「褐虫藻(かっちゅうそう)」という植物プランクトンを共生させており太陽の光を浴びて褐虫藻が行う光合成によって作られた栄養分(糖分など)をもらって生きています。そのためシャコガイは日当たりの良い浅い海にしか生息できず常に口を開けて太陽光を取り込んでいます。もちろん海水中のプランクトンを濾過して食べることもしますが栄養の大部分は光合成に依存しています。
多くの種類は足糸(そくし)と呼ばれる繊維を出してサンゴや岩に体を固定したり自分の殻の重みやサンゴの成長によって体に埋め込まれたりして生活しています。
雌雄同体であり繁殖期には精子と卵子の両方を放出します。
シャコガイの分布と規制
日本では鹿児島県の奄美群島以南、沖縄県の全域、小笠原諸島に分布しています。
サンゴ礁の浅い海域(礁池やリーフエッジ)で見ることができます。
シャコガイ科の全種はワシントン条約(CITES)の附属書IIに掲載されており国境を越える移動には許可証が必要です。そのため海外旅行のお土産として拾った貝殻や購入した貝殻を無許可で日本に持ち帰ることはできません。税関で没収されるケースが多発しているため注意が必要です。
シャコガイの料理
沖縄料理店や現地の鮮魚店では高級食材として扱われています。貝柱とヒモ(外套膜)肝(内臓)それぞれに異なる美味しさがあります。
刺身
最もポピュラーな食べ方です。
貝柱は繊維がしっかりとしておりサクサクとした歯切れの良い食感と上品な甘みがあります。ホタテよりも歯ごたえがあり濃厚です。
ヒモ(外套膜)の部分はコリコリとした食感があり磯の香りが強いです。肝は濃厚なコクがあり珍味として喜ばれます。醤油とワサビだけでなくシークワーサー醤油や酢味噌で食べるのも沖縄流です。
バター焼き・ソテー
加熱すると甘みが増し食感もモチモチと変化します。
ニンニクとバターで炒めると磯の香りとバターの風味が相まって食欲をそそります。硬くならないように火を通しすぎないのがコツです。
和え物・塩辛
ヒモや肝を使った塩辛は「シャコガイの塩辛」として酒の肴に最高です。
泡盛との相性は抜群でご飯のお供にもなります。
まとめ
シャコガイは太陽の光を食べて生きるという植物のような生態を持つ不思議な巨大貝です。その美しい外套膜は海中の宝石であり貝柱の美味しさは海の恵みそのものです。人食い貝という汚名は過去のものとなり現在は保護すべき貴重な資源として扱われています。沖縄を訪れた際は規制を守りつつその力強い食感と南国の太陽を凝縮したような旨味を味わってみてください。
シャコガイに関するよくある質問
挟まれると抜けなくなりますか
大型のオオシャコガイなどに手足を入れると強力な力で殻を閉じられ抜けなくなる危険性はゼロではありません。しかし彼らは光合成のために常に口を開けており閉じる動作は意外とゆっくりです。不用意に触れたり中を覗き込んだりしなければ挟まれることはまずありません。ダイバーが事故に遭うケースの多くは海底に固定された貝に器材などが引っかかることによるものです。
貝殻を持ち帰ってもいいですか
沖縄県内で拾った貝殻を国内(自宅)に持ち帰ることは問題ありませんが海外旅行(フィリピンやパラオなど)のお土産として日本に持ち込むことはワシントン条約により禁止されています(許可証が必要)。知らずに持ち込んで空港で没収されるケースが非常に多いため海外では貝殻を拾っても持ち帰らないようにしてください。
肝(内臓)に毒はありますか
シャコガイ自体に毒はありませんが中腸腺(肝臓)には毒素が蓄積される可能性があります。特にオニヒトデが大発生している海域などの特定の環境下ではプランクトン由来の毒を持つことがあるため現地の人でも肝は生で食べずに取り除く場合があります。一般的に流通しているものは安全ですが不安な場合は貝柱とヒモだけを食べるのが無難です。































