イタヤガイ

ホタテガイを小さくしたような見た目で、片方の殻が大きく膨らみ、もう片方の殻が平らであるというユニークな形状を持つイタヤガイ。その平らな殻が、木の板で葺いた屋根(板屋葺き)のように見えることから「板屋貝」と名付けられました。また、膨らんだ方の殻を柄杓(ひしゃく)の代用として使っていたことから「シャクシガイ(杓子貝)」という別名も持っています。ホタテほどの知名度はありませんが、その味はホタテ以上に甘く濃厚であると評され、寿司ネタや高級食材として重宝されています。左右で全く形の違う不思議な貝殻の秘密や、ホタテとの見分け方、そして貝柱の甘みを堪能する料理について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | イタヤガイ目イタヤガイ科イタヤガイ属 |
| 標準和名 | イタヤガイ |
| 漢字 | 板屋貝 |
| 別名 | シャクシガイ、ヒシャクガイ、オウギガイ |
| 学名 | Pecten albicans |
| 英名 | Japanese baking scallop |
| 季節 | 冬から春 |
| 生息域 | 北海道南部以南の日本全土、砂底 |
イタヤガイとは
イタヤガイは日本の沿岸の浅い砂底に生息するイタヤガイ科の二枚貝です。
誰もが知るホタテガイの親戚にあたりますが、ホタテが寒冷地を好むのに対し、イタヤガイは比較的暖かい海にも生息しています。
名前の由来は、平らな方の殻(左殻)にある放射状の筋が、板を並べて葺いた屋根(板屋)のように見えることから来ています。
一方、膨らみのある方の殻(右殻)は白くてお椀のように深くなっており、昔の人はこれを船の水を汲み出すアカ汲みや、ひしゃくとして利用していました。
市場流通量はホタテに比べて圧倒的に少ないですが、味の良さから産地では非常に人気があります。
貝殻の形が整っていて美しいため、工芸品や装飾品の材料としても古くから愛されています。
イタヤガイの特徴
殻の大きさは10センチメートル前後になります。
最大の特徴は、二枚の殻の形と色が全く異なることです。
海底で下になっている右殻は、白くて深く湾曲しており、お椀のような形をしています。
上になっている左殻は、赤褐色や茶褐色をしており、完全に平らで、蓋のような役割を果たしています。
この「お椀と蓋」のような組み合わせが、イタヤガイを見分ける最大のポイントです。
海中ではホタテと同様に、殻をパクパクと開閉させて海水を吐き出し、その勢いでジェット噴射のように泳ぐことができます。
その遊泳力は高く、敵であるヒトデなどが近づくと勢いよく飛び跳ねて逃げます。
ホタテガイとの違い
見た目は似ていますが、並べてみると明確な違いがあります。
殻の形
ホタテガイも左右の殻の膨らみに差がありますが、イタヤガイほど極端ではありません。
ホタテは平らな方の殻(左殻)も少し膨らんでいますが、イタヤガイの左殻は定規を当てられるほど真っ平ら、あるいは少し凹んでいることさえあります。
大きさと生息域
ホタテガイはより大型になり、冷たい北の海を好みます。
イタヤガイはホタテより一回り小さく、西日本を含む広い範囲に分布しています。
味
味の系統は似ていますが、イタヤガイの方が繊維が柔らかく、甘みが強いと言われることが多いです。
ただし、貝柱のサイズはホタテの方が大きいです。
イタヤガイの料理
食べる部分は主に貝柱ですが、ヒモ(外套膜)や生殖巣も美味です。熱を通しても硬くなりにくく、上品な出汁が出ます。
刺身
新鮮なイタヤガイの貝柱は、刺身にするのが一番です。
ホタテよりも繊維が細かく、ねっとりとした舌触りと強い甘みがあります。
わさび醤油だけでなく、塩とレモンで食べると甘みが際立ちます。
バター焼き・ソテー
平らな殻を取り除き、深い方の殻を器にしてバター焼きにします。
バターのコクがイタヤガイの甘みと絡み合い、醤油を数滴垂らすと香ばしさが加わります。
身が縮みにくいため、見た目も豪華に仕上がります。
フライ・天ぷら
ホタテと同様にフライにすると絶品です。
外はサクサク、中は半生の状態で仕上げると、ジューシーな旨味が口の中に溢れます。
小ぶりのものは天ぷらかき揚げにしても美味しいです。
煮付け・含め煮
甘辛く煮付けるとご飯のおかずになります。
また、干し貝柱に加工されることもあり、中華料理の高級出汁の材料としても使われます。
まとめ
イタヤガイは、「板屋」の名の通りユニークな殻を持つ、ホタテの隠れたライバルです。その美しい殻は浜辺の宝石としてビーチコーマーを喜ばせ、その中身は食通を唸らせるだけの実力を持っています。スーパーでホタテによく似た、片方が白くて丸く、もう片方が赤くて平らな貝を見かけたら、それはきっとイタヤガイです。ぜひその濃厚な甘みを味わってみてください。
イタヤガイに関するよくある質問
貝殻はリメイクに使えますか
はい、非常に人気があります。
イタヤガイの右殻(白い方)は深さがあり形も綺麗な扇形をしているため、アクセサリートレイや小皿、絵を描くキャンバスとしてハンドメイド作家によく利用されます。
平らな左殻も風鈴のパーツや壁掛けの装飾などに使われます。
ウロ(黒い部分)は食べられますか
ホタテガイと同様に、中腸腺(ウロ)と呼ばれる黒っぽい緑色の部分は、貝毒などの毒素が蓄積しやすい部位であるため、食べるのは避けて取り除くのが無難です。
貝柱、ヒモ、生殖巣(オレンジや白の部分)は美味しく食べられます。
どこで購入できますか
一般的なスーパーに並ぶことは少ないですが、鮮魚に力を入れているデパートの魚売り場や、市場、産地の鮮魚店などで見かけることがあります。
また、ネット通販で産地直送のものを購入することも可能です。
冬から春にかけての旬の時期が狙い目です。































