イガイ

パエリアやワイン蒸しなど地中海料理に欠かせない食材として世界中で愛されているムール貝。日本でも洋食店でお馴染みの貝ですが実は日本古来の在来種である「イガイ」と外来種である「ムラサキイガイ」が混同されていることが多いのをご存知でしょうか。私たちが普段口にしているのは主にムラサキイガイの方ですが本来のイガイは殻が大きく厚みがあり濃厚な旨味を持つ高級食材として知られています。瀬戸内海などでは「セトガイ」とも呼ばれ炊き込みご飯などで親しまれてきたこの貝の正体と外来種との見分け方そして絶品レシピについて解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | イガイ目イガイ科イガイ属 |
| 標準和名 | イガイ |
| 漢字 | 貽貝 |
| 別名 | セトガイ、オオメガイ、ニタリガイ |
| 学名 | Mytilus coruscus |
| 英名 | Korean mussel / Hard-shelled mussel |
| 季節 | 春から夏(産卵期前) |
| 生息域 | 北海道から九州の沿岸 |
イガイとは
イガイは日本および朝鮮半島中国沿岸などの東アジアに分布するイガイ科の大型二枚貝です。
一般的に「ムール貝」と呼ばれるものはヨーロッパ原産の「ムラサキイガイ」や「ヨウラクイガイ」を指すことが多くこれらは昭和初期に日本に入ってきた外来種です。
一方標準和名「イガイ」は日本に古くから生息している在来種です。
ムラサキイガイに比べて殻が大きく成長すると20センチメートル近くになることもあります。
殻が厚く黒光りする姿から「カラスガイ」と呼ばれることもありますが淡水に生息する本物のカラスガイとは全く別の種類です。
地方名も多く瀬戸内海周辺では「セトガイ」と呼ばれ古くから郷土料理の食材として大切にされてきました。
イガイの特徴
殻長は10センチメートルから15センチメートルほどになりムラサキイガイよりも大型化します。
殻は厚くて硬く表面は黒色や黒褐色をしています。
最大の特徴は殻の頂点(殻頂)の形です。ムラサキイガイの殻頂が尖っているのに対しイガイの殻頂は鷲のクチバシのようにカギ状に曲がっています。
また足糸(そくし)と呼ばれる強靭な繊維を分泌しこれで岩礁やコンクリートにしっかりと体を固定しています。この足糸は非常に強力で手で引き剥がすのは困難です。
身は大きくふっくらとしておりメスは鮮やかなオレンジ色(赤褐色)オスは乳白色をしています。
イガイの生態とライフサイクル
食性は濾過食性です。海水中のプランクトンをエラで濾し取って食べています。
水深数メートルから20メートル程度の岩礁帯に生息しておりムラサキイガイが潮間帯(潮の満ち引きで露出する場所)や岸壁の浅い場所に密集するのとは少し生息環境が異なります。
イガイは比較的深い場所を好み単独または数個体が集まって岩の隙間などに生息しています。
産卵期は冬から春にかけてでありその前の春から夏にかけて身が肥えて最も美味しくなります。
イガイの分布と生息環境
北海道南部から九州にかけての日本各地の沿岸に分布しています。
外洋に面した潮通しの良い岩礁帯を好みます。
かつては日本各地で普通に見られましたが埋め立てや護岸工事による環境変化そして繁殖力の強い外来種ムラサキイガイとの競合により個体数は減少傾向にあります。現在では大型のイガイは貴重な存在となりつつあります。
イガイの漁法と採取
専門の漁は少なく主に素潜り漁や他の貝類(サザエやアワビ)漁の際に混獲されることが多いです。
岸壁やテトラポットに付着しているムラサキイガイとは異なり少し深い場所にいるため一般の人が潮干狩り感覚で採ることは難しいです。
市場に出回る量も少なく鮮魚店で見かけることは稀ですが産地では直売所などで販売されています。
イガイの料理
濃厚な旨味と良い出汁が出るため和洋中どんな料理にも合います。特に身が大きいイガイは食べ応えがあり加熱しても縮みにくいのが魅力です。
酒蒸し・ワイン蒸し
最もシンプルかつ最高の食べ方です。
ニンニクとオリーブオイルで炒めて白ワインで蒸せば洋風に日本酒で蒸せば和風になります。
貝から出る白濁したスープは濃厚なエキスの塊でありパンを浸して食べると絶品です。仕上げにバターを落とすとコクが増します。
イガイ飯(セトガイ飯)
瀬戸内地方の郷土料理です。
イガイの煮汁を使ってご飯を炊き炊き上がりにイガイの身を混ぜ込みます。
磯の香りがご飯一粒一粒に染み渡り箸が止まらなくなる美味しさです。
パスタ(ペスカトーレ)
トマトソースとの相性が抜群です。
イガイから出る出汁がソースに深みを与えます。殻ごと豪快に盛り付けると見た目も華やかになります。
バター焼き・醤油焼き
大きな身はステーキのように焼いて食べることができます。
バター醤油で香ばしく焼き上げるとプリプリとした食感と濃厚な甘みを楽しめます。
まとめ
イガイは日本の海が育んだ在来のムール貝でありその味わいは外来種を凌ぐほど濃厚で奥深いものです。ムラサキイガイの陰に隠れがちですが殻の頂点が曲がった大きな黒い貝を見つけたらそれは貴重な本物のイガイかもしれません。もし手に入ったらその堂々たる大きさと凝縮された海の旨味をぜひ味わってみてください。
イガイに関するよくある質問
ムラサキイガイとの見分け方は
最も分かりやすいのは「殻の頂点(尖った部分)」と「殻の色」です。
イガイ(在来種): 殻の頂点が鷲のクチバシのようにカギ状に曲がっています。殻は厚く茶色味がかった黒色です。
ムラサキイガイ(外来種): 殻の頂点が尖っていて真っ直ぐです。殻は薄く青みがかった黒色(紫色)をしており表面が滑らかです。
貝毒の危険性はありますか
イガイを含む二枚貝はプランクトンを濾過して食べるため毒性のあるプランクトンが発生する時期(主に春から初夏)には貝毒を蓄積する可能性があります。
市場に流通しているものは定期的な検査が行われており安全ですが自分で採取して食べる場合は各自治体が発表する貝毒情報を必ず確認してください。特に赤潮が発生している海域の貝は食べてはいけません。
足糸(そくし)は食べられますか
足糸は非常に硬い繊維であり消化できないため食べられません。
調理する前に引き抜くか調理後に食べる際に取り除いてください。調理前に取る場合は貝の合わせ目から出ている足糸をペンチなどで掴み殻の太い方へ向かって勢いよく引っ張ると抜くことができます。































