アコヤガイ

世界中の女性を魅了する宝石である真珠。その母なる貝として最も有名なのがアコヤガイです。明治時代に御木本幸吉が世界で初めて真珠の養殖に成功して以来日本の宝飾産業を支え続けてきた立役者です。一般的には真珠を作るための貝として知られていますが真珠を取り出した後に残る貝柱が極めて美味であることはあまり知られていません。冬の真珠浜揚げの時期にしか出回らないその貝柱はホタテ以上の甘みと独特の歯ごたえを持ち産地では冬の味覚として珍重されています。美しい輝きを生み出す生態や知られざる食材としての魅力について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 二枚貝綱ウグイスガイ目ウグイスガイ科アコヤガイ属 |
| 標準和名 | アコヤガイ |
| 漢字 | 阿古耶貝 |
| 別名 | 真珠貝 |
| 学名 | Pinctada fucata martensii |
| 英名 | Akoya pearl oyster |
| 季節 | 冬(貝柱の旬) |
| 生息域 | 本州中部以南の内湾 |
アコヤガイとは
アコヤガイは房総半島以南の暖かい海に生息するウグイスガイ科の二枚貝です。
名前の由来は愛知県の阿久比(あぐい)周辺にかつてあった阿古屋(あこや)という地名でこの貝が多く獲れたことに由来すると言われています。
古くから天然真珠を産出する貝として知られてきましたが明治以降は養殖技術の確立により三重県の伊勢志摩や愛媛県の宇和島長崎県の大村湾などが主要な産地となりました。
真珠層という美しい光沢を持つ層を体内に形成する能力に長けておりこれが宝石の真珠を作り出します。
真珠養殖の副産物として採れる貝柱は食用として流通しますが鮮度が落ちやすいため多くは産地で消費されるか冷凍品として出回ります。
アコヤガイの特徴
殻の大きさは7センチメートルから10センチメートルほどになります。
殻の形は半円形や四角形に近い丸みを帯びており蝶番(ちょうつがい)の部分が直線的です。
殻の表面は薄い板が重なったような構造で剥がれやすく色は黒褐色や緑褐色をしています。
最大の特徴は殻の内側にある真珠層です。
内面全体が強い光沢を帯びた銀白色をしており虹色に輝いています。この層の成分はカルシウムの結晶とタンパク質で構成されており真珠と同じ成分です。
そのため貝殻自体もボタンや螺鈿細工などの工芸品の材料として利用されます。
アコヤガイの生態とライフサイクル
食性はプランクトン食性で海中の植物プランクトンを濾過して食べます。
波の静かな内湾を好み足糸(そくし)と呼ばれる丈夫な糸を出して岩やロープに強固に付着して生活します。
水温の変化には敏感で13度以下になると活動が低下し赤潮などの環境悪化にも弱いため養殖にはきめ細かな管理が必要です。
寿命は自然界では10年近く生きることもありますが養殖の場合は数年で浜揚げ(収穫)されます。
雌雄異体ですが若い個体はオスが多く成長するとメスに性転換する傾向があります。
真珠ができる仕組み
アコヤガイが真珠を作るのは本来は防御反応です。
体内に異物が侵入すると貝はその刺激から身を守るために外套膜から真珠層の成分を分泌し異物を包み込もうとします。
この性質を利用したのが真珠養殖です。
人工的に成形した核と他の貝の外套膜の一部(ピース)を母貝の体内に手術で挿入し数ヶ月から数年かけて真珠層を厚く巻かせることで美しい真珠が誕生します。
アコヤガイが持つ強い光沢とキメの細かい真珠層が世界最高峰のテリを持つ真珠を生み出すのです。
アコヤガイの料理(貝柱)
アコヤガイの身の中で一般的に食用とされるのは貝柱の部分です。外套膜(ヒモ)も食べられますが苦味が強いため貝柱のみを食べるのが主流です。
刺身
新鮮な貝柱は透き通るような飴色をしています。
ホタテの貝柱よりも繊維がしっかりとしておりサクサクとした独特の歯ごたえがあります。
噛むほどに強い甘みと旨味が広がり一度食べると病みつきになる美味しさです。
12月から1月頃の浜揚げシーズンにしか味わえない貴重な味覚です。
バター焼き・ソテー
熱を通しても硬くなりにくく甘みが増します。
バター醤油で香ばしく炒めるとご飯のおかずにもお酒のつまみにも最高です。
小粒なのでパスタの具材やグラタンに入れても存在感を発揮します。
天ぷら・フライ
かき揚げにすると三つ葉や玉ねぎの風味と貝柱の甘みが絶妙にマッチします。
フライにすればサクッとした衣の中からジューシーな旨味が溢れ出します。
粕漬け
酒粕に漬け込むことで日持ちがし風味も豊かになります。
伊勢志摩地方などではお土産品として真珠漬けなどの名前で販売されています。
まとめ
アコヤガイはその身を削って世界で最も美しい宝石を生み出す貝です。しかしその役割を終えた後に残される貝柱もまた食通を唸らせる海の宝石と言えるでしょう。真珠のネックレスの輝きを見るたびにその裏にある豊かな海の恵みと美味しい貝柱の存在を思い出してみてください。もし冬の産地を訪れる機会があれば真珠だけでなくこの絶品の貝柱を味わうことを強くおすすめします。
アコヤガイに関するよくある質問
真珠は食べられますか
真珠そのものは炭酸カルシウムが主成分であり石のようなものなので食用には適しません。
しかし粉末にした真珠(パールパウダー)は古くから漢方薬や化粧品の原料として利用されておりクレオパトラが酢に溶かして飲んだという伝説も残っています。
カルシウム補給や美容効果を期待して利用されることはありますがそのまま噛んで食べるものではありません。
貝柱以外の身は食べないのですか
食べることは可能ですがあまり一般的ではありません。
内臓部分は雑味があり時期によっては貝毒のリスクがあるため通常は除去されます。
ヒモ(外套膜)は塩揉みしてぬめりを取り酢の物などで食べることができますが苦味があるため好みが分かれます。
最も安全で美味しいのはやはり貝柱です。
どこで手に入りますか
鮮魚として一般のスーパーに並ぶことは稀です。
三重県や愛媛県などの産地の鮮魚店や道の駅では冬場になるとパック詰めされた生の貝柱が販売されます。
またネット通販では冷凍された貝柱が通年で入手可能です。
真珠養殖が盛んな地域ならではの食材です。































