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お正月の注連飾り(しめかざり)に橙(ダイダイ)や裏白(ウラジロ)と一緒に飾られている茶色い粒々のついた海藻を見たことがあるでしょうか。あれが海藻のホンダワラです。地域によっては神馬藻(ジンバソウ)とも呼ばれ古くから縁起物として神事に使われてきた歴史深い海藻です。成熟すると数メートルにも達し海の中で森のような群落(ガラモ場)を作ることで魚たちの産卵場所や稚魚の隠れ家となる重要な役割も果たしています。ワカメやコンブに比べると食用のイメージは薄いかもしれませんが実はシャキシャキとした食感が楽しく非常に美味しい食材でもあります。名前の由来となった伝説や海の中での生態そして若い芽を味わう料理について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 褐藻綱ヒバマタ目ホンダワラ科ホンダワラ属 |
| 標準和名 | ホンダワラ |
| 漢字 | 馬尾藻、本俵 |
| 別名 | ジンバソウ(神馬藻)、ナノリソ |
| 学名 | Sargassum fulvellum |
| 英名 | Gulfweed / Sargassum |
| 季節 | 冬から春(1月〜4月) |
| 生息域 | 日本全土の潮間帯下部から漸深帯 |
ホンダワラは日本全土の岩礁域に分布する褐藻類(茶色い海藻)です。
冬から春にかけて大きく成長し水面まで届くほどの長さになることもあります。
ホンダワラ属の海藻は日本に数多く存在しますが一般的にホンダワラと呼ばれるのは標準和名ホンダワラ(Sargassum fulvellum)を指します。
最大の特徴は葉の付け根にある小さな風船のような気胞(きほう)です。
この気胞の中にガスが溜まっており浮き袋の役割を果たすことで海中で直立し太陽の光を効率よく浴びることができます。
また古くから食用や肥料として利用されるほかヨウ素(ヨード)の原料としても重要視されてきました。
成長すると体長は1メートルから数メートルに達します。
体色は黄褐色や茶褐色をしていますが熱湯に通すと鮮やかな緑色に変化します。
葉はヘラ状や笹の葉状で縁にギザギザ(鋸歯)があるものが多いです。
特徴的な気胞は球形や楕円形をしており熟すとこの気胞が房状に連なります。
この気胞の集まりが稲穂のように見えることから豊作の象徴として正月の飾りに使われるようになりました。
また千切れて海面を漂うホンダワラ類は「流れ藻」となりブリやアジなどの幼魚が身を寄せる揺り籠としての役割も担っています。
ホンダワラにはいくつかの呼び名がありそれぞれに由来があります。
ホンダワラ(本俵)
気胞がたくさん付いている様子を米俵(こめだわら)に見立てて「俵」の字を当てたとする説が有力です。
稲穂に似ていることから豊作祈願の意味も込められています。
ジンバソウ(神馬藻)
神功皇后(じんぐうこうごう)が新羅遠征の際に馬の飼料が尽きてしまい海岸に打ち上げられたホンダワラを洗って馬に与えたところ馬が元気を取り戻したという伝説に由来します。
このことから「神の馬の藻」としてジンバソウと呼ばれるようになりました。
ナノリソ(莫告藻)
万葉集などの和歌に登場する古名です。
「名告(なの)りそ(私の名を告げないでください)」という言葉と掛詞として使われました。
ホンダワラ類が密集して生えている場所は「ガラモ場」と呼ばれます。
これはコンブが作る「コンブ場」やアマモが作る「アマモ場」と並んで沿岸生態系にとって極めて重要な場所です。
メバルやカサゴなどの根魚の住処になるほかアオリイカやサヨリなどが卵を産み付ける産卵床としても利用されます。
複雑に入り組んだホンダワラの森は稚魚たちにとって大型の捕食者から身を守るための最高の隠れ家となります。
若い芽や葉は柔らかくてアクが少なくシャキシャキとした歯ごたえがあります。食べる際はサッと茹でて緑色にしてから調理します。
酢の物・和え物
ホンダワラ料理の定番です。
茹でて刻んだホンダワラを三杯酢やポン酢で和えます。
キュウリやタコと一緒に和えると食感のコントラストが楽しめます。
さっぱりとした味わいと磯の香りが食欲をそそります。
佃煮
醤油みりん砂糖で甘辛く煮詰めるとご飯のお供に最適です。
気胞のプチプチとした食感がアクセントになります。
日持ちもするので常備菜として便利です。
天ぷら・素揚げ
生のままあるいは軽く茹でてから衣をつけて揚げます。
油で揚げることで香ばしさが増しスナック感覚で食べられます。
気胞が弾けることがあるので揚げる際は油跳ねに注意してください。
味噌汁
刻んで味噌汁の具にします。
火を通しすぎると色が黒ずんで食感が悪くなるため食べる直前に入れてサッと煮るのがコツです。
磯の風味が汁に溶け出し上品な味わいになります。
ホンダワラは正月の縁起物としてだけでなく海の生態系を支える森としての役割も持つ偉大な海藻です。稲穂のような見た目に豊作の願いを込めた昔の人々の感性は現代の食卓にも受け継がれています。もし春先の海岸や魚屋で気胞のついた茶色い海藻を見かけたら神話の時代から続くその歴史とシャキシャキとした春の味覚を味わってみてください。
最大の違いは「粘り気」の有無です。アカモクは茹でて刻むと強烈なネバリが出るのに対し、ホンダワラは茹でても強い粘り気は出ず、シャキシャキとした軽快な食感が中心となります。
はい、問題なく食べられます。気胞の部分は噛むとプチンと弾ける独特の歯ごたえがあり、佃煮などにすると良いアクセントになります。ただし、育ちすぎると硬くなるため若い時期のものが美味しいです。
日本全国の潮通しの良い海岸の岩場に自生しています。ただし、共同漁業権のある海域での無断採取は密漁となるため厳禁です。購入する場合は、春先に鮮魚店や産地の道の駅などでパック詰めされたものを入手できます。
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