ヤマトカラッパ

前回紹介した「メガネカラッパ」が愛嬌のあるアイドルだとしたら、こちらは**「カラッパ界の横綱」とも呼べる存在です。ヤマトカラッパは、日本近海に生息するカラッパ(箱型カニ)の仲間で最大級の大きさ**を誇ります。その姿は、海に沈んだ「巨大な丸い石」か、あるいは焼きたての「大きなパン」のよう。派手な模様はありませんが、圧倒的な重量感と、人間の指さえ砕きかねない強力なハサミを持つ、深場の重戦車について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 十脚目カラッパ科カラッパ属 |
| 標準和名 | ヤマトカラッパ |
| 漢字 | 大和空ッ波(大和=日本の、大きい) |
| 別名 | オオパンガニ、マンジュウガニ |
| 学名 | Calappa japonica |
| 英名 | Japanese box crab |
| 甲羅の幅 | 15cm〜17cm(握り拳2つ分ほどになる) |
| 生息域 | 本州中部以南、水深50m〜200mの砂泥底 |
ヤマトカラッパとは
ヤマトカラッパは、やや深い海(大陸棚の縁辺部)に生息する大型のカニです。
甲羅の幅は15センチメートルを超え、厚みも凄まじいため、持ち上げるとズッシリとした重さを感じます。
体色は全体的に薄いオレンジ色(肌色)やクリーム色で、メガネカラッパのような目立つ模様はありませんが、甲羅の表面にはゴツゴツとしたコブがあります。
普段は砂の中に潜って目だけを出していますが、その巨体ゆえに隠れきれていないこともしばしばです。
底引き網漁では、高級なタカアシガニやカレイなどに混じって水揚げされますが、市場での流通は稀です。
名前は「日本一」の証?
「ヤマト(大和)」という名前は、「日本の」という意味に加え、「大きい」「立派な」という意味合いで生物名に使われることが多い言葉です。 その名の通り、日本で見られるカラッパ類(メガネカラッパ、トラフカラッパ、コブカラッパなど)の中では最大種です。
並べてみると、他のカラッパが子供に見えるほどの貫禄があります。
最強の「缶切り」能力
カラッパ類の共通点である「右ハサミの缶切り突起」も、ヤマトカラッパのサイズになると凶器レベルです。
右のハサミの付け根にある突起を、硬い巻貝の入り口に引っ掛け、テコの原理と握力でバリバリと殻を破壊します。
大型のヤマトカラッパなら、サザエクラスの硬い貝殻でも砕くことができます。
このハサミは、人間の指くらいなら簡単に大怪我をさせる威力があるので、生きている個体を扱う際は細心の注意が必要です。
食材としての評価
**「殻を割る苦労さえ惜しまなければ、最高のご馳走」**です。
体が大きい分、中に入っている身の量も多く、食べごたえがあります。
味はカニとエビの中間のような風味で、甘みが強く、繊維が太くてプリプリしています。
また、甲羅の中にあるカニ味噌や内子(卵)は、ウニのように濃厚でクリーミーです。
しかし、殻の硬さはハンパではありません。「石を割るつもり」で挑む必要があります。
ヤマトカラッパの料理
キッチンバサミでは太刀打ちできない場合が多いので、カナヅチやペンチを用意してください。
塩茹で・蒸し
ダイナミックに丸ごと茹でます。
茹で上がったら、裏返してふんどし(腹)を開け、そこから甲羅を剥がします。
ハサミの部分はハンマーで叩き割って身を取り出します。
苦労して取り出した身を口に入れた時の幸福感は格別です。
カニ汁(味噌汁)
殻を割るのが面倒な場合は、出汁要員として活躍してもらいます。
ナタや出刃包丁の背(ミネ)で叩き割って鍋に放り込めば、料亭のような濃厚な出汁が出ます。
甲羅が分厚いので、長時間煮込んでも良いスープが出続けます。
甲羅グラタン
食べた後の甲羅は、綺麗に洗うと「器」として使えます。
ホワイトソースと身を詰めて焼けば、見た目も豪華なグラタンになります。
ヤマトカラッパの丸くて大きな甲羅は安定感が抜群です。
まとめ
ヤマトカラッパは、その巨体とつるんとした見た目から、海に住む巨大なクリームパンのようにも見えます。しかし、その実態は硬い貝殻を粉砕する怪力自慢であり、分厚い装甲の下には極上の甘みを持った身を隠し持っています。もし漁港の朝市などで、肌色の巨大な石のようなカニを見かけたら、ぜひハンマー片手にその味に挑戦してみてください。
ヤマトカラッパに関するよくある質問
メガネカラッパとの違いは何ですか?
一番の違いは**「大きさ」と「模様」**です。
- メガネカラッパ:幅10cm〜12cm。目の周りに眼鏡模様がある。
- ヤマトカラッパ:幅15cm〜17cm(もっと大きくなる)。目立つ模様はなく、全体的に薄いオレンジ色。
どこで手に入りますか?
水深が深いため、海水浴場などでは見られません。
底引き網漁が盛んな地域(愛知県、静岡県、和歌山県、高知県など)の魚屋や道の駅で、「雑魚(未利用魚)」として売られていることがあります。
ネット通販の「深海カニセット」などに入っていることもあります。
殻はどうやって割ればいいですか?
調理用のハサミでも刃が欠けることがあるので、調理用ハンマーやペンチ、カニ割り器を使うのが無難です。
タオルで包んでから叩くと、殻が飛び散らずに済みます。
包丁を使う場合は、絶対に無理に押し込まず、関節などの柔らかい部分を狙ってください。































