マダコ

日本の食卓において刺身やたこ焼きとして不動の人気を誇るマダコ。海外ではその異様な姿からデビルフィッシュと呼ばれ忌み嫌われることもありますが日本では弥生時代の遺跡からタコ壺が見つかるほど古くから愛されてきた食材です。高い知能を持ち瓶の蓋を開けたり周囲の色に合わせて瞬時に体色を変えたりする擬態能力はまさに海の忍者のようです。兵庫県の明石ダコに代表されるようにブランド化された国産物は高値で取引されますがスーパーで見かけるものの多くはアフリカなどからの輸入に頼っています。8本の足と吸盤を持つこのユニークな生物の驚くべき生態と美味しく食べるための下処理について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 頭足綱タコ目マダコ科マダコ属 |
| 標準和名 | マダコ |
| 漢字 | 真蛸 |
| 別名 | タコ |
| 学名 | Octopus sinensis |
| 英名 | Common octopus |
| 季節 | 夏(関西)、冬(関東・東北) |
| 生息域 | 本州中部以南、世界中の温帯・熱帯海域 |
マダコとは
マダコは本州以南の日本各地や世界中の温帯海域に生息するタコの代表種です。
日本で単にタコと言う場合は一般的にこのマダコを指します。
かつては東アジアのマダコと大西洋のマダコは同種とされていましたが近年の研究により別種であることが判明し学名も区別されるようになりました。
ユーモラスな姿と高い知能を併せ持ちカニやエビを好んで食べるためその身には甲殻類由来の旨味が凝縮されています。
近年ではモーリタニアやモロッコなど西アフリカ産の輸入ダコが市場の多くを占めていますが国産のマダコは風味が強く歯ごたえが良いことから高級品として珍重されています。
マダコの特徴
体長(腕の長さを含む)は60センチメートル前後になり体重は数キログラムになります。
特徴的な8本の腕には大小様々な吸盤が2列に整然と並んでおり筋肉の塊であるこの腕を使って獲物を絞めたり海底を歩いたりします。
特筆すべきはその擬態能力です。皮膚にある色素胞を自在に収縮させることで岩肌や海藻砂地など周囲の環境に合わせて瞬時に体色や皮膚の質感を変化させることができます。
また心臓を3つ持っており血液は銅を含むヘモシアニンという成分によって青く見えます。
墨を吐くこともできますがイカの粘り気のある墨とは異なりタコの墨は水に拡散しやすく煙幕のように広がって敵の視界を遮る役割を果たします。
マダコの生態とライフサイクル
食性は肉食性でカニやエビなどの甲殻類や二枚貝を好んで捕食します。
岩の隙間や砂泥底に巣穴を作り主に夜間に活動します。
獲物を捕らえると鋭いカラストンビ(クチバシ)で噛みつき唾液腺から分泌される毒素で麻痺させてから食べます。
知能が非常に高く学習能力があり鏡を認識したり簡単な道具を使ったりすることも報告されています。
寿命は短く1年から2年程度です。
繁殖期は春から秋にかけてでメスは岩陰などに産卵し孵化するまでの約1ヶ月間餌を食べずに卵を守り続けます。
卵に新鮮な水を送り続け子供たちが孵化して旅立つのを見届けるとメスは力尽きてその生涯を終えます。
マダコの分布と旬
日本の本州中部以南の沿岸域に広く分布しています。
旬の時期は地域によって異なり二つの大きなピークがあります。
関西地方特に瀬戸内海では梅雨時から夏にかけてが旬とされこの時期のタコは麦わらダコと呼ばれ柔らかくて美味しいとされます。
半夏生(はんげしょう)にタコを食べる習慣はこの関西の旬に由来します。
一方関東や三陸地方では冬場が旬とされ水温が下がって身が引き締まり甘みが増したものが好まれます。
特に兵庫県明石市の明石ダコや神奈川県の佐島ダコは潮の流れが速い海域で育つため足が太く短く身が締まった最高級ブランドとして知られています。
マダコの釣り
タコ釣りはオクトパッシングとも呼ばれ近年非常に人気のある釣りジャンルです。
タコエギ・タコテンヤ釣り
堤防や船からカニやエビに似せたルアー(エギ)やカニを縛り付けたテンヤと呼ばれる仕掛けを海底に沈めて釣ります。
竿先を小刻みに動かしてエギを躍らせタコが抱きつくのを待ちます。
ズシリとした重みが乗ったら一気に合わせを入れ海底から引き剥がす力勝負が魅力です。
海底に張り付かれると根掛かりのように動かなくなるため張り付かれる前に巻き上げるパワーが必要です。
マダコの料理
タコ料理の基本はぬめり取りと茹で加減にあります。生の状態では灰色ですが加熱すると鮮やかな赤色に変化し食欲をそそります。
下処理(ぬめり取り)
美味しいタコ料理を作るための必須工程です。
内臓を取り除いたタコをボウルに入れ多めの塩を振って洗濯をするように手で揉み込みます。
しばらくすると大量の泡とぬめりが出てくるので流水で洗い流します。これを2回から3回繰り返してキュッとした手触りになるまで完全にぬめりを取ります。
この作業を怠ると臭みが残り食感も悪くなります。
茹でダコ・刺身
沸騰したお湯にタコの足先から少しずつ入れていくと綺麗なカールを描いて茹で上がります。
茹で時間は大きさによりますが3分から5分程度で余熱で火を通すと硬くなりすぎません。
ぶつ切りにしてわさび醤油や塩ごま油で食べると噛むほどに旨味が溢れ出します。
タコ飯
茹でダコまたは生のタコを米と一緒に炊き込みます。
タコから出る赤い色がご飯に移り桜色のご飯になります。生姜を効かせると風味が良くなります。
柔らか煮
大根や炭酸水と一緒に長時間煮込むと繊維がほぐれて驚くほど柔らかくなります。
甘辛い煮汁が染み込んだ柔らかいタコは日本酒のアテに最高です。
タコ唐揚げ
ぶつ切りにしたタコに醤油とニンニク生姜で下味をつけて揚げます。
居酒屋の定番メニューでありビールとの相性は抜群です。
まとめ
マダコは日本の食文化に深く根付いた特別な存在です。その高い知能と短い寿命の果てに見せる母性愛は生物としての尊さを感じさせます。スーパーで真っ赤に茹でられたタコを見かけたらそれが明石の海で育ったものか遥かアフリカから来たものか産地を確認してみてください。塩で丁寧に揉んで仕上げた自家製の茹でダコの味は市販品とは一線を画す格別の美味しさです。
マダコに関するよくある質問
ミズダコとの違いは何ですか
最大の違いは大きさと食感です。
ミズダコは北太平洋に生息する世界最大のタコで体長3メートルを超えます。身は水分が多く柔らかいのが特徴です。
一方マダコは大きくても60センチメートル程度で身が引き締まっておりコリコリとした強い歯ごたえと濃厚な旨味があります。
スーパーでは足が太くて吸盤が大きいのがミズダコ、比較的小ぶりで吸盤が整列しているのがマダコであることが多いです。
脳みそが9個あるって本当ですか
本当です。
頭部にある主脳の他に8本の腕それぞれに神経節(小さな脳のようなもの)が存在します。
これにより腕が独立して判断し行動することが可能です。
例えば切断された腕がしばらく動き回ったり餌を掴もうとしたりするのはこのためです。
茹でると赤くなるのはなぜですか
タコの殻(皮膚)に含まれる色素成分の変化によるものです。
生の状態ではタンパク質と結合しているため目立ちませんが加熱によってタンパク質が変性し分離することでオモクロームという赤い色素本来の色が現れます。
カニやエビが茹でると赤くなるのと似た原理です。































