アサヒガニ

カニと言えば横に歩く姿を想像しますがアサヒガニはその常識を覆し前後に歩く変わったカニです。茹でる前から甲羅が鮮やかな赤色をしておりその姿が朝日のように見えることから名付けられました。兜のような縦長の甲羅とスパナのような形をしたハサミを持ち一見すると原始的な姿をしていますが味は極めて洗練されています。身は繊維が太くカニというよりは伊勢海老に近いようなプリプリとした食感と甘みを持っています。九州南部や沖縄などで珍重されるこのユニークなカニの生態と美味しい食べ方について解説します。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | 十脚目アサヒガニ科アサヒガニ属 |
| 標準和名 | アサヒガニ |
| 漢字 | 旭蟹 |
| 別名 | カブトガニ(本来のカブトガニとは別)、ヨロイガニ |
| 学名 | Ranina ranina |
| 英名 | Spanner crab / Red frog crab |
| 季節 | 冬から春 |
| 生息域 | 本州中部以南、インド・西太平洋域 |
アサヒガニとは
アサヒガニは暖流の影響を受ける海域に生息するアサヒガニ科の大型のカニです。
一般的なカニ(短尾類)とは異なりヤドカリとカニの中間的な特徴を持つ原始的なグループに分類されることもあります。
名前の由来は生体の時から甲羅が鮮やかな赤色(オレンジ色)をしており海から上がってくる姿が水平線から昇る朝日のように見えることに由来します。
鹿児島県の種子島や屋久島宮崎県高知県などが主な産地として知られています。
その特異な形状から一部の地域ではカブトガニやヨロイガニと呼ばれることもありますが生物学上のカブトガニとは全く無関係です。
海外でもスパナクラブと呼ばれオーストラリアや東南アジアで高級食材として扱われています。
アサヒガニの特徴
甲羅の幅は15センチメートルほどになりますが縦に長いドーム型をしているため数字以上に大きく見えます。
最大の特徴は歩脚の形状と動き方です。
ハサミ脚は工具のスパナのような独特の形をしており物を挟むというよりは引っ掛けるような構造になっています。
残りの4対の足は平たく変形しておりこれは砂に潜るために特化しています。
カニ特有の横歩きはできず前後に移動します。特にバックで素早く砂に潜る能力に長けています。
目は甲羅の縁から少し飛び出しており砂に潜ったままでも周囲を見渡すことができます。
甲羅の表面はザラザラとした顆粒状の突起で覆われています。
アサヒガニの生態とライフサイクル
食性は肉食性で小魚や貝類ゴカイなどを捕食します。
水深10メートルから50メートル程度の浅い砂泥底や砂地を好んで生息しています。
普段は砂の中に体を埋めて目だけを出して獲物を待ち伏せたり外敵から身を隠したりしています。
産卵期は夏(6月から8月頃)でメスは鮮やかなオレンジ色の卵(内子・外子)を持ちます。
この時期のメスは資源保護のために禁漁となっている地域が多いです。
アサヒガニの分布と漁獲
日本では房総半島以南の太平洋側や南西諸島に分布しています。
特に九州南部(鹿児島県・宮崎県)での漁獲量が多いです。
底刺し網漁やカニ籠漁で漁獲されます。
砂地に生息しているため底引き網でも混獲されることがあります。
流通量はそれほど多くなく産地や高級料理店で消費されることが一般的です。
アサヒガニの料理
アサヒガニの味はカニの中でもトップクラスと評されます。身は水分が少なく締まっておりエビとカニの良いとこ取りをしたような味わいです。
塩茹で・蒸しガニ
最もシンプルかつ最高の食べ方です。
甲羅の中に身がぎっしりと詰まっており茹でると繊維がほぐれやすくなります。
カニ酢などがなくてもそのままで十分に甘く淡白ながらも深い旨味があります。
カニミソは他のカニに比べてあっさりとしており上品なクリーミーさがあります。
味噌汁
良い出汁が出るため味噌汁の具としても優秀です。
ぶつ切りにして水から煮出すと赤い殻から黄金色の出汁が出てきます。
殻が硬いので調理の際は出刃包丁などで叩き割る必要があります。
パスタ・グラタン
身に弾力があり存在感が強いため洋風料理にもよく合います。
トマトクリームソースとの相性は抜群でカニミソをソースに溶かし込むと濃厚なパスタになります。
殻を器に使ったグラタンは見た目も豪華で子供にも喜ばれます。
まとめ
アサヒガニは原始的な姿の中に洗練された味を秘めた不思議なカニです。横歩きをしないという不器用な一面も愛らしく茹でる前から赤いその姿は食卓を明るく彩ってくれます。もし市場や旅先でこの赤いカニに出会ったらその見た目に惑わされずにぜひ味わってみてください。エビのようなプリプリ感とカニの甘みが融合した新しい味覚体験が待っているはずです。
アサヒガニに関するよくある質問
殻は剥きやすいですか
殻は比較的柔らかいですが形状が特殊なため慣れが必要です。
特に甲羅の縁や足の付け根は入り組んでいます。
キッチンバサミを入れて腹側の殻を切り取るようにすると身を取り出しやすくなります。
ズワイガニのように足の身をスポッと抜くことはできないためハサミで殻を割りながら食べることになります。
旬はいつですか
一般的には冬から春(11月から4月頃)が旬とされています。
この時期は身入りが良く甘みが増します。
夏場は産卵期にあたり多くの地域で禁漁期間となるため市場には出回りません。
また脱皮直後の個体は身入りが悪いため避けた方が良いでしょう。
カニミソは美味しいですか
美味しいですが毛ガニやズワイガニのような濃厚でこってりとしたミソとは少しタイプが異なります。
アサヒガニのミソは量がそれほど多くなく味もあっさりとしていて上品です。
ミソ単体で食べるというよりは身と一緒に絡めて食べるとコクが増して美味しくなります。































